MathWorks は、MATLABおよびSimulinkにさまざまな新たな機能を追加した最新リリース「Release 2017a(R2017a)」を発表した。
同リリースでは、ADASと自動運転システムを設計、シミュレーション、およびテストするための新製品「Automated Driving System Toolbox」が追加された(使用するためにはComputing Vision System Toolboxが必要)。また、86製品のアップデートおよびバグ修正も含まれている。
MATLAB製品ファミリでアップデートおよび追加された機能は以下の通り。
MATLAB
- タイトル、ラベル、凡例、その他の注釈など、Live Editor内での対話的な図の更新、およびライブスクリプト出力を他のアプリケーションにコピーする機能
- データ可視化のためのheatmapチャート機能
- i smember、sort、conv、および移動統計関数など、tall 配列を操作する関数を追加
Econometrics Toolbox
- 応答と一連の予測子変数の関係を分析するためのベイズ線形回帰モデル
- 外生予測変数を含む多変数時系列データを分析するためのベクトル自己回帰モデル
MATLAB Production Server
- IT設定および制御のためのWebベースのサーバ管理ダッシュボード
- Neural Network Toolbox
- 回帰タスクを行うための、PC、クラスタ、およびクラウド上で複数 GPUによるたたみ込みニューラルネットワーク(CNN)を学習させる深層学習アルゴリズム
- 画像最適化による、CNNモデルが学習した特徴量の可視化
- 事前学習済みCNNモデル(AlexNet、VGG-16およびVGG-19)およびCaffe Model Zooのモデルのウェイトを移す関数
Statistics and Machine Learning Toolbox
- 教師あり機械学習による回帰モデル学習を行う回帰学習器アプリ
- サポート。ベクター・マシン(SVM)および単純ベイズ分類、バギング決定木、およびlasso回帰のためのtall 配列アルゴリズム
Computer Vision System Toolbox
- Fast R-CNNおよびFaster R-CNNによる、オブジェクト検出のための深層学習
Automated Driving System Toolbox
- ADASおよび自動運転システムを設計、シミュレーション、およびテストするための新製品
一方、Simulink製品ファミリでアップデートおよび追加された機能は以下の通り。
Simulink
- Simulinkプロジェクトアップグレードにより、プロジェクトのすべてのファイルを最新リリースに対応するように簡単に更新
- parsimコマンドにより、複数のシミュレーションを並列化して直接実行
- メモリにデータをロードせずにMATファイルから大量の入力信号をストリーミング
- 信号をバスにすばやくグループ化するためにバス配線を減らし、サブシステム間およびサブシステム内の信号線を減らすためにバス要素端子を自動作成
- 信号配線時にブロックに入出力端子を自動的に追加
Simscape Multibody
- ランタイムパラメータにより、シミュレーションタスクを高速化し、Cコードを再生成せずにコンポーネントのパラメータを変更
- マルチボディシミュレーションでクラウドベースCAD アセンブリを使用するためのOnshape CADインポート
このほか、信号処理・通信への機能強化として、「Antenna Toolbox」では、アンテナ設計アプリにより、望ましい特性のアンテナの選択と解析をインタラクティブに実施、「Communications System Toolbox」では、マルチパスや散乱伝播シナリオで適用される空間定義されたMIMOチャネルのモデル化およびシミュレーションの強化、「LTE System Toolbox」では、3GPP 5G無線技術をシミュレートするMATLAB関数が追加されたほか、公共安全および車両通信アプリケーションのためのLTE-A ProSe 直接通信のリンクレベルシミュレーションを実現するSidelinkレシーバ機能の強化、「WLAN System Toolbox」では、IEEE 802.11ad 準拠波形の生成をサポートといったような機能強化などが図られた。また、コード生成の更新プログラムとしては、「Embedded Coder」では、以前のリリースから生成されたモデル参照コードを再利用するためのクロスリリースコードの統合、「Simulink Coder」では、MATLAB Functionブロックシミュレーションおよびコード生成における動的メモリサポート、「HDL Coder」では、IEEE標準の単精度浮動小数点演算からのHDLコード生成、「HDL Verifier」では、MATLABまたはSimulinkで解析するための内部FPGA信号のプロービングおよび取得をサポート、といったことが実施された。さらに、検証と妥当性確認としては、「Polyspace Bug Finder」にてMISRA C:2012 Amendment 1と新しい暗号化ルーチンに対するコードチェック、「Simulink Verification and Validation」にて、クローン検出の改善により、繰り返し登場するライブラリパターンおよびサブシステムクローンをリファクタリングすることが可能となったほか、DOORS Next Generationの要件にモデル要素をリンクして追跡するDOORS Next Generationのサポート、「Simulink Design Verifier」にて、シミュレーション用にスライサの強調表示でステート・アクティビティ・タイミングの効果の可視化、「Simulink Code Inspector」にて、MATLAB、Simulink、およびStateflowでループ演算および循環演算のサポート、といったものがそれぞれサポートされたという。
なお、R2017aはすでに入手可能な状態になっているという。