京都大学iPS細胞研究所(京大CiRA)は3月14日、ヒトiPS細胞から高効率に血管内皮細胞を作る方法を確立したと発表した。
同成果は、京大CiRA増殖分化機構研究部門 山下潤教授らの研究グループによるもので、3月13日付けの米国科学誌「PLOS ONE」に掲載された。
血管内皮細胞は、あらゆる血管の内壁に並んでおり、血流の内外への物質移動をコントロールするという血管機能の中心的役割を果たしている。従来ヒト血管内皮細胞を用いた研究には、ヒト臍帯などから採取された内皮細胞が多用されていたが、細胞により性質や反応が異なり一定の結果が出ないなどの欠点があった。
同研究グループはこれまでに、マウスの多能性幹細胞を使って血管内皮細胞の分化誘導方法を確立し、血管新生に関わる増殖因子のひとつであるVEGFが血管内皮細胞への誘導に必要であり、cAMPという化合物がその効果を高めることを示していた。
今回の研究では、ヒトiPS細胞からの効率的な内皮細胞誘導を行うため、VEGFとcAMPを用いて分化のステージに応じた刺激を与えるともに、刺激後早いステージでVEGF+cAMP刺激に反応しない細胞を取り除き、血管内皮細胞へと分化誘導した。
この結果、途中で細胞を取り除かない場合と比較しての高い効率(純度99%以上)と収量で血管内皮細胞へと分化させることに成功。得られた内皮細胞は、臍帯静脈内皮細胞などよりやや幼若で、種々の内皮細胞にさらに分化成熟しうるポテンシャルを有するものであることが考えられるという。
同研究グループは、今回の成果について、再生医療や3次元組織構築に広く利用されることが期待されると説明。実際に、今回開発した技術を利用して作製した血管内皮細胞を使って血液脳関門のモデルの作製に成功したことがすでに報告されている。