バーコードやRFIDなどを用いた自動認識システムを提供するサトーホールディングス(以下、サトー)は10日、自社事業の一角である「ラベル印刷」に真っ向から対立する「ラベルレス印刷」技術を持つ英国のベンチャー企業・DataLaseを買収し、その技術力を活用した新事業を発表した。
ラベルレスで印刷する技術「IDP」
新事業では、サトーの自動認識技術と、DataLaseの印字技術「インライン・デジタル・プリンティング(以下、IDP)」をかけあわせた柔軟な自動認識ソリューションを提供する。
IDPとは、特殊な発色顔料をコーティング剤として使用することで、様々な素材の塗布面を感熱素材に変え、レーザー照射で可変情報を印字できるデジタル印刷技術。これまでのタグづけフローではラベルを印刷して貼り付けたり、インクを転写したりしていたところを、梱包材や製品パッケージの必要な部分のみを感熱化させてダイレクトに印刷する。
この特性により、バーコードなどの可変情報をオンデマンド印刷することが可能になるほか、多言語対応や国別の法規制の違いによるバリエーション管理が簡便化され、包材のSKU(在庫管理ユニット)が劇的に減るという。同社としては、ラベル印刷とラベルレス印刷という対比ではなく、物と情報を一致させるためのタグ付けに用いる手法の選択肢のひとつとして、このIDPを活用するという。
新事業の具体例は2つ挙げられ、ひとつ目はサトーのソリューション提案にIDPを組み込むこと。大量かつ高速な印字が求められる生産ラインへの対応や、可変情報の柔軟な印字が必要な顧客への提案強化を見込む。
もう一つが、IDPによって小売業などがカスタマイズしたパッケージを素早く、低コストで生産できるパッケージングソリューションの提供だ。DataLase チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO) Mark Naples氏は、海外市場ではパッケージのパーソナル化、リアルタイム性が業界のトレンドであり、例えばオリンピックなどの大きなイベントで金メダルを獲った選手の名前入りボトルを迅速に生産・販売することで、消費者のリアクションは好意的に変化するだろうと語った。サトーとしても、顧客の感情に訴えかける手法は今後重要性を増すと考えているとのこと。
事業展開においては、IDPだけでなく、サトーの「エコナノ」技術やラベル・パッケージデザインの提案などを組み合わせ、環境に優しく、かつパーソナライズ化されたパッケージングの提供を目指す。本件については、IDPがフルカラー対応する2019年以降の事業加速を見込む。