オリックス自動車は2月24日、2017年3月12日に認知症対策強化を盛り込んだ「改正道路交通法」が施行されることを受けて、2月1日より提供を開始した同社の法人向けテレマティクスサービス「e-テレマ」を個人ドライバーに応用した高齢ドライバー見守りサービス「あんしん運転 Ever Drive」に関して、高齢ドライバーの現状と課題を交える形で説明を行った。

交通事故が起こる原因は何か?

交通事故はどうして起こってしまうのか。その背景には1つは一時停止無視などの不安全な運転行動、もう1つは飛び出しなどの予測できない状況、という2つの要因が組み合わさることで発生すると考えられている。つまり、不安全な運転黄道を排除し、運転黄道そのものに意識を集中できれば、事故は未然に防げる、という発想で、運転の際の危険挙動などを可視化することで、意識の向上や指導に生かそうというのがe-テレマの始まりだったと同社は説明している。

2つの運転に関する要因が組み合わさることで交通事故が発生する

では、実際に可視化されるものは何か、というと、走行中の急加速、急減速、速度超過といったもので、e-テレマでは、こうした運転を危険挙動として、メールで上司などに届けられる仕組みとなっており、実際に同社では、導入前後で危険挙動を伴う運転回数は14カ月で速度超過70.7%減などを達成できることを4万4500台のデータから確認したとしている。

e-テレマを利用した後の危険挙動数の推移。導入から14カ月ほど経つと、速度超過などの危険挙動が大きく低下していることが確認された

Ever Driveは、これを家庭に置き換えたもので、ドライバーである高齢者が危険挙動をすると、家族にメールが届くほか、1日1回、前日の運転記録もメールで配信され、運転ログを見ることで、家族の視点から、運転に危険はないかといったことを把握することが可能となる。同社では、「家族を含めて運転を見直すことで分かってくることが多く、それにより高齢ドライバーが長く運転できるようになるのではないかという思いから開発した」と説明している。

「あんしん運転 Ever Drive」の概要

ちなみに、65歳以上の高齢者の免許保有者数は1700万人を超えており、全年齢で見た場合の交通事故による死亡件数は年々減少傾向にあるものの、高齢者が占める割合は増加傾向にある。

全年齢に対する交通事故による死亡事故件数は減少傾向にある一方で、75歳以上の高齢運転者による死亡事故の比率は年々高まっている

軽度の認知機能低下はトレーニングで回復する可能性も

NPO法人高齢者安全運転支援研究会の岩越和紀 理事長

自身も70歳という年齢になったばかりというNPO法人高齢者安全運転支援研究会の岩越和紀 理事長は、「70歳という年齢が社会的にどういうものかを自覚しないでなった。色々と立場も変わるし、運転免許も更新内容が変わってくる、ということを勉強することで実感しているくらい」と、実際の高齢者が高齢者としての意識をあまり持ってないことを指摘。一方で、認知症に由来する可能性がある徘徊が、クルマに乗って行われるいわゆる「徘徊運転」が今後増える可能性があるとし、「歩行徘徊は地域支援センターなどのネットワークができているが、運転徘徊はそういうのができておらず、行政をまたいだ地域ネットワークができていかないといけないのではないかと思っている。犯罪者追跡などに活用されているNシステムなどのシステムの活用も含めた枠組みを作っていくことが必要」であり、GPSを搭載するEver Driveもそうしたシステムとしての活用に向けて支援をしていきたいとした。

高齢者が増加するにつれ、認知症患者の数も増加することが見込まれており、徘徊運転の件数も増加することが見込まれる

またNPOとしての取り組みから、実は認知症までは行かなくても、認知機能が低下しているドライバーは相当数いる可能性が見えてきたことを報告。現在もそういったドライバーは普段と変わりなく運転をしているが、どういったところで事故につながるかの解明に向けた調査を進めているとする。「調査の際、運転に失敗したときに一番多いのが言い訳がうまい人。そこに何々があったのが悪く、自分は悪くないとか、いつも運転しているクルマと違うからといった言葉が多い」とのことで、そういう発言などをアンケートから精査し、30項目の「運転時認知障害早期発見リスト30」を作成。これは埼玉県警のWebサイトにも掲載しているという。

運転時認知障害早期発見チェックリスト30 (出所:埼玉県警察Webサイト)

ちなみに、30項目のうち、5項目以上にチェックが入った場合は、認知機能検査を受けることが推奨されている。「認知機能の低下は軽度であれば、きちんとトレーニングを受けることで元に戻ることが出来るといわれている」とのことで、認知機能が低下している可能性があるのであれば、早めにトレーニングを受けるべきであるとしていた。

チェックリストは鳥取大学の浦上克哉 教授が監修。これまでの軽度認知障害(MCI)の人を対象に行った実験から、MCIの一部として運転時に現れやすい事象をまとめたものだという

なお、Ever Driveは基本1年契約で月々2980円(税別)でサービスが提供されている。車載端末取り付けなどにかかる初期費用は通常であれば1万円(同)とのことであるが、同社では2017年5月末までの申し込みに関しては0円で提供するキャンペーンを展開しているとしており、今回の法改正を機に、活用促進を図っていきたいとしている。

「e-テレマ」や「あんしん運転 Ever Drive」の利用時にクルマに取り付けられる車載機