半導体市場動向調査企業である米IC Insightsは、同社会員向けに発行した「McClean Reprot 2017年3月改訂版」を踏まえた、世界半導体企業設備投資額調査結果(2016年実績および2017年計画)を発表した。世界中の半導体企業のうち、2017年に10億ドル以上の設備投資を行う予定は11社。2016年の世界半導体企業全体の設備投資額は、前年比4%増と伸びたが、2017年も前年比6%増の723億ドル規模へと伸長する見通しとなっている。
2017年の投資予定額上位11社だけで世界の半導体設備投資総額の約8割を占める計算となる。2013年には10億ドル超の設備投資を行ったのは8社であったことから、そこから3社増えたこととなる。11社のうち、米Intel、米GLOBALFOUNDRIES(GF)、STMicroelectronicsの3社は、前年比で25~73%ほど投資額を増やそうとしている。これに対して、米Micron Technology、中国SMIC、台湾UMCは、2016年の増加率がそれぞれ28%、87%、50%と高かったことから、2017年の投資額は前年比2桁減となっている。
最も高い投資額を予定しているSamsung、それに肉薄するIntel
2017年、半導体業界で最も高額の設備投資を予定しているのは、3年連続で韓Samsung Electronicsである。毎年、110~130億ドル規模の投資を続けてきた。これに対して、投資額2位のIntelは、73億ドル(2015年)、96億ドル(2016年)、120億ドル(2017年)と毎年、微細加工プロセスに対する投資額を増やし続けており、2017年の投資計画額はSamsungとほぼ並ぶまでに増額している。このペースでいけば、来年はIntelがトップに躍り出る可能性が高い。
3位となるTSMCは、2016年とほぼ同額の100億ドルを投資する計画だが、アプリケーションプロセッサの生産を受託しているAppleが販売するiPhoneの次世代機種の売れ行き次第では増額する可能性があろう。
ソニーは投資額削減でランク外へ消える
2017年において投資額10億ドル以上のランキングから消えたのがソニーだ。ソニーは、2016年には10億6000万ドルの設備投資を行ってランキングに名を連ねていたが、2017年のイメージセンサの生産能力増強に向けた投資額は10億ドル未満となる予定のため、欄外へ消えることとなる。
そのソニーに代わって登場したのがSTMicroelectronicsである。2017年の投資予定額10億5000万ドルというのは前年比73%増という驚異の増加率である。しかし、これは今年限りの増加であり、来年以降は、以前のように設備投資額を売上高の10%以内に制限するとIC Insightsは見ている。
2016年に投資額増加率が最高だったSMIC
次に、2016年の設備投資を見てみよう。前年(2015年)比で最も設備投資の増加率が大きかったのは、中国SMICで、増加率は87%だった。同社の工場稼働率は年間を通してほぼ95%以上であったという。2016年当初には21億ドルを投資する予定であったが、11月に26億ドルに増額したため、このような大きな増加率となった。
これに対して、2016年、特に前半は、DRAMが不況に陥り価格低下に見舞われた結果SamsungとSK Hynixの設備投資は前年比でそれぞれ13%、14%減となった。しかし、両社とも3D NANDフラッシュメモリに限ってみると、その投資額は増加となっている。
また、GFは2016年、製造ラインの稼働率が低かったことから、設備投資を前年比62%減まで絞っていたが、2017年はその反動で同33%増となる20億ドルとしている。とはいえ、投資額そのものは同社の2015年投資額40億ドルの半分に過ぎない。同社は10nmをスキップして7nmプロセスに移行することにしているが、2017年の投資額はこのための準備に使われるようだ。
継続して設備投資額を増やせる企業はわずか
最後に、2016年、2017年と2年続けて設備投資額を増額させ続けている企業はどこか、ということに触れておきたい。前述したIntelはその代表的企業である。STも同30%、同73%と増加率が顕著だ。東芝/Western Digitalも四日市市での3D NANDフラッシュメモリ増産に向けて設備投資額を毎年少しずつではあるが増やしている。
これまでの半導体業界では、多くの企業が、高額な設備投資をした翌年には、投資を一休みして装置立ち上げや歩留まり向上に徹するために投資額を減らすという動きをとってきた。しかし、投資額上位11社中、連続して設備投資額を減らしている企業は一社もないことは注目しておく必要があるだろう。