NTTデータアイと日本光電工業は3月6日、脳波データを用いて脳活動状態を可視化し、脳活動が関連する病態に関わる判断・評価または診断を行なうための情報を提供する「脳波解析システム NATESAS」(医療機器認証番号:228AHBZX00042000)を、2017年4月から全国の医療機関向けに提供開始すると発表した。両社は2020年度に医療機関500施設への導入を目指す。
両社は2014年10月から、認知症の研究者及び脳機能研究所などとともに、脳波計で計測した脳波データを可視化する「脳活動画像表示技術(NAT技術)」を利用し、認知症(アルツハイマー型認知症など)の早期発見を目的とする共同研究を実施していた。共同研究において、多様な被検者の脳波データを脳機能研究所のNAT技術とNTTデータアイの機械学習技術を用いて分析することで、脳活動状態の可視化と脳波データ間の類似性を数値化することに成功。
NATESASは、日本光電の脳波計で計測した脳波データを分析し、脳活動の状態を可視化する医療用クラウド型の脳波解析システム。脳疾患患者群と健常者群の脳活動情報の特性をデータベース化しており、検査対象の患者の脳活動情報と各群の脳活動情報を対比し、それらを可視化したカラーマップや数値化した類似性評価結果を提供する。
これにより、脳活動が関連する病態について医師が判断・評価または診断する際に、NATESASのアウトプットを参考に脳活動の状態を確認できるとしている。カラーマップでは、周波数ごとに脳活動情報を可視化し、類似性評価結果では比較対象となる2つの脳活動状態にどれだけ類似しているかを、-1.00から1.00の数値で示す。
同サービスの特徴として、脳活動状態の可視化、患者の身体的負担軽減、安価で導入しやすい検査機器、機械学習技術による自律的なグループ分けと類似性の評価、高いセキュリティ性の5点を挙げる。
脳活動状態は、従来の脳波波形の直接判読では困難な脳活動情報の特性を可視化。身体的負担軽減については、国際10-20法に基づき、患者の両耳朶(耳たぶ)を含む頭部21ヵ所に電極を装着し脳波を計測するため、放射線や強磁気を受けないという。
検査機器に関しては、日本光電の脳波計と脳波計レビュー・プログラム、ネットワーク回線、およびデータ送受信・画面表示用の汎用IT機器(PCなど)があれば利用可能であり、専用の検査機器の購入は不要としている。
機械学習技術については、事前に収集した脳疾患患者群および健常者群の脳波データから得た脳活動情報の特性を機械学習技術により抽出・分類し、類似性を定量的に評価できるようデータベース化する。これらのデータベースと検査対象の患者の脳活動情報を比較して、類似性を数値で示す。
セキュリティ性に関しては、3省4ガイドラインを順守し、安全性が高いAES方式による脳波ファイルの暗号化、医療機関内で管理する患者番号と独立した番号で脳波データを管理し、個人を特定できない仕組みの構築、医療機関とのネットワーク回線とのVPNによる接続などの対策により、高いセキュリティを確保し盗聴・改竄・なりすましを防ぐとしている。
NATESASでは、第1弾としてアルツハイマー型認知症患者群の脳活動情報の特性をデータベース化している。今後、多様な脳疾患患者群の脳活動情報を機械学習させることで、脳活動が関連する各種病態に関するデータベースを充実していく考えだ。