東北大学は3月3日、低ヤング率であり優れた成形性が期待されるAl(アルミニウム)-Ca(カルシウム)合金のヤング率が加工・熱処理で変化するメカニズムを解明したと発表した。これにより同材料のヤング率の制御が可能となる。
同成果は、東北大学大学院工学研究科の手束展規准教授と日本軽金属らの研究グループによるもので、2月26日~3月2日に米国・サンディエゴで行われた「TMS2017 146th Annual Meeting and Exhibition」にて発表された。
ヤング率とは、細い棒を引き伸ばしたときの引っ張り応力と単位長さ当たりの物質の伸びとの比で、材用の"変形のしやすさ"を表すもの。実用Al合金においては、Fe(鉄)、Si(ケイ素)、Cu(銅)などの元素添加や冷間・熱間加工、熱処理により、強度や伸びなどの機械的特性は制御可能だが、ヤング率は68~72GPaとほぼ一定の値をとる。
一方、Al-Ca合金は内在する金属間化合物Al4Caが非常に低いヤング率(20GPa)であるため、合金としても低ヤング率であり、高成形性材料として期待されている。しかし、熱間・冷間加工や熱処理でヤング率が変化することが実用化への課題となっていた。
今回、同研究グループは、X線回折装置を用いることで、熱間・冷間加工前後、熱処理前後においてAl4Caの結晶構造が可逆的に変化するマルテンサイト変態が起こることを確認した。つまり、Al-Ca合金の加工・熱処理によるヤング率の変化は、Al4Caのマルテンサイト変態に起因するものであることがわかったため、同変態の制御によりAl-Ca合金のヤング率制御が可能となった。
また、強度向上のためヤング率に影響を及ぼさないFeを添加することで、Al-Ca合金の実用化の目途が立ったという。同研究グループは、寸法精度の厳しい電子機器材料や超塑性による高成形性材料への応用が期待されると説明している。