ロート製薬はこのほど、「肌再生」研究を歯周病分野に応用すべく研究を行い、ハッカ油が歯根膜線維芽細胞の増殖を促進する効果を持つことを発見した。また、医薬品の有効成分(止血成分)として知られる「カルバゾクロム」が、歯根膜線維芽細胞においてコラーゲン産生を促進し、さらに、コラーゲン分解を抑制する酵素「TIMP2」の産生を促進することを確認した。

これらの結果は、ハッカ油とカルバゾクロムが歯周組織再生の基盤となる作用をもつことを示すもので、歯周病で崩壊した歯根膜の修復に貢献すると期待される。同研究成果は、2017年6月2日~4日にかけて東京都で開催される「第17回日本抗加齢医学会総会」において発表予定だ。

ハッカ油が歯周病の症状改善に重要な細胞増殖に効果

カルバゾクロム添加の歯根膜線維芽細胞は、コラーゲン産生が促進された

同社が近年では再生医療分野への進出、幹細胞の皮膚研究への応用など、長年継続している皮膚研究の幅を広げる中で、歯を支える「歯根膜」という歯周組織がコラーゲンを主体とし幹細胞も存在するという点で皮膚と類似の組織であることに着目し、研究範囲を歯科領域へと拡張していたことが同成果の背景にはあるという。

歯根膜は、歯と歯槽骨の間に存在する線維性結合組織。約60%がコラーゲン線維でできており、コラーゲン線維束が歯と歯槽骨を強く連結することで、歯はぐらつかず機能を保つことができる。歯根膜などの歯周組織には皮膚と同様の自己再生力が備わっているが、歯周病が進行すると慢性的な炎症によって歯根膜の破壊が進行するため、重症の歯周炎では歯がぐらついたり、抜けたりすることがある。

今回の研究では、コラーゲンなどの歯根膜構成成分を生み出す細胞である歯根膜線維芽細胞を培養後、ハッカ油を添加し、さらに培養して細胞数を測定した。その結果、ハッカ油を添加した歯根膜線維芽細胞において、細胞増殖が促進されることを確認した。

また、同様に止血効果のために医薬品の有効成分して用いられるカルバゾクロムを、培養した歯根膜線維芽細胞に添加し、さらに培養した後コラーゲン量の測定を行ったところ、カルバゾクロムを添加した歯根膜線維芽細胞において、コラーゲン産生が促進されることを確認した。カルバゾクロムを添加した歯根膜線維芽細胞について、分泌されたタンパク質の網羅的解析を行ったところ、コラーゲン分解を抑制する酵素「TIMP2」の産生が亢進していることが確認された。また、遺伝子発現比較を行ったところ、「TIMP2」遺伝子の発現上昇が見られた。

前述の通り、歯根膜はコラーゲン含有量が高く、その量は線維芽細胞により維持されている。ハッカ油が歯根膜線維芽細胞を増殖し、カルバゾクロムがコラーゲン産生を促し、同時にコラーゲン分解の抑制に作用した結果から、同社はハッカ油とカルバゾクロムは歯根膜の再生をサポートするのに有用であると考えている。

なお、同研究の目標は、「成人の5人に4人が歯周病とも言われる現代において、これまでの肌再生研究で培った知見を生かし、歯周病治療に『歯周組織再生』の概念を取り入れた歯周病対策商品の開発」を行うことだった。今後、これらの知見を歯周病対策商品へと応用していく。