National Instruments(NI)の日本法人である日本ナショナル・インスツルメンツ(日本NI)は3月3日、自動テストの展望についてまとめた「Automated Test Outlook 2017(自動テストの展望 2017)」を発行した。
同レポートは、同社が有するテスト/計測動向についての見解などをもとに毎年発行しているもので、次世代デバイスのテストに向けた、再構成可能なテスト装置やSoftware Centricなテスト用プラットフォーム、エコシステムなど、自動テストの環境に変革をもたらす主要技術などの説明などが行われてきた。今回のレポートでは、過去40年間のテスト/計測技術を、NIの共同設立者で、同社の取締役会長を務めるJames Truchard氏が振り返るほか、最も重要な市場と技術トレンドがなんであるかを指摘、今後の展望についての解説などが行われている。
具体的には、近年、めまぐるしく変化する技術革新の中、テストエンジニアリングの重要性が増してきていることを受け、この約10年程度を振り返り、自動テストの活用などで成果をあげている企業などを取り上げることで、製造業におけるテストという工程が重要なポジションを得ようとしていることを紹介することを目的に、「再構成が可能な計測器」、「テスト組織の最適化」、「ソフトウェアを中心としたエコシステム」、「管理されたテストシステム」、「ソフトウェア駆動型のテストが必須に」という5つの章立てで構成されている。
同レポートでの最大のテーマは、テスト部門はこれまでコストセンターとして扱われる場合がほとんどであったが、現在およびこれからは、かつてのIT部門がそうであったように、TCO(Total Cost of Ownership))の観点から、プロフィットセンターへと生まれ変わる、というもので、汎用的なPXIベースのFPGAを組み合わせたテストシステムを活用することで、柔軟性を最大限に活用した各地域ごとに異なる規制への標準化対応や、組織横断的なテストシステムの活用、といったものを進め、テストコストの低減と、開発期間の短縮を図ることが可能となることが掲げられている。
「TCOを考えた場合、コストは開発、導入、運用に分けられる。新たな技術やシステムを利用しようと思うと、開発や導入コストが発生する。しかし、運用コストが低減でき、しかもそれが3~5年スパンで見た場合、旧来システムよりも総額として低くなるのかどうかがポイント」と、同社では説明しており、事例としては3カ月で投資コストを回収できた例もあるほか、例えばIntelではLTEモデムの特性評価・V&Vテストには1週間必要としていたが、これを2日以内に短縮することに成功。テストカバレッジも増加しており、結果として数億円単位でコスト削減を果たしたほか、Qualcommでも従来のテスト時間に対し、PXIベースのVST(ベクトル信号トランシーバ)、LabVIEW、FPGAの組み合わせによるシステムでは200分の1に短縮、Broadcomもパワーアンプ製造テスト時間を5分の1に短縮するなどの成果が出ているとする。また、半導体以外の分野でも、例えばAudiでは、VSTの活用により、車載レーダーセンサのセーフティ関連ソフトウェア評価を自動化でき、開発効率の向上を果たしたほか、富士重工業でもダイナモ・実機を活用した場合と比較してテスト時間を推定所要時間の20分の1に短縮することに成功したとしている。
なお同社では、デバイスの複雑さが増していく一方で、市場への投入期間の短縮要求が高まっており、自動テストシステムのTCOは、今後も企業の収益性に対して継続的に大きな影響を及ぼしていくことになるだろう、としている。