京都大学(京大)は3月3日、アトピー性皮膚炎に対する治療薬として開発中の抗IL-31受容体ヒト化モノクローナル抗体nemolizumabに関する第II相国際共同治験を行った結果、臨床症状やかゆみに対する有効性が確認されたことを発表した。
同成果は、京都大学医学研究科 椛島健治教授らの研究グループによるもので、3月3日付けの米国科学誌「The New England Journal of Medicine」オンライン版に掲載された。
アトピー性皮膚炎によるかゆみの発生にはインターロイキン-31(IL-31)が関与していることが知られており、IL-31を標的としたアトピー性皮膚炎のかゆみの治療戦略が期待されている。nemolizumabは、IL-31と結合する受容体IL-31RAのみを標的とするヒト化モノクローナル抗体で、IL-31とIL-31RAとの結合を阻害することにより薬効を発揮する。2015年に臨床第I相試験の結果が報告されていた。
今回の試験では、国内外の中等症から重症のアトピー性皮膚炎患者264名を対象に、4つのnemolizumab(0.1、0.5、2.0mg/kgを4週間ごとに投与、2.0mg/kgを8週ごとに投与)群とプラセボ群(4週間ごと)に約50人ずつランダムに割り付け、薬剤・プラセボを12週間に渡り皮下投与した。
この結果、主要評価項目である12週時のそう痒VAS1変化率において、nemolizumab投与群はそれぞれ-43.7%、-59.8%、-63.1%と、プラセボ群の-20.9%に対し有意な改善効果がみられた。
また、副次的評価項目である12週時のEASI2変化率は、プラセボ群の-26.6%に対し、nemolizumab投与群ではグループごとにそれぞれ-23.0%、-42.3%、-40.9%。sIGA3の2ポイント以上の改善が認められた患者の割合は、プラセボ群の10.5%に対し、13.8%、37.5%、25.1%となった。さらに同論文のsupplementにおいては、nemolizumabによる総睡眠時間の増加も報告されている。なお、nemolizumabによる重篤な副作用は確認されなかったという。
今回の成果について同研究グループは、中等症から重症のアトピー性皮膚炎において、nemolizumabがかゆみ抑制効果を表すこと、さらに睡眠の質を向上させ、QOLの向上に寄与することを示したものであると説明している。