ノースウェスタン大学の研究チームは、二次元材料「ボロフェン」と異種材料との界面形成に成功した。界面の形成とその制御は、ボロフェンをデバイスとして応用する上で不可欠の要素となる。研究成果はScience系列のオープンアクセス誌「Science Advances」に掲載された。

ボロフェンと有機材料PTCDAの界面(出所:ノースウェスタン大学)

ボロフェンは、ホウ素原子が二次元に配列したホウ素同素体。グラフェンが六角形の格子状に炭素原子が並んだ構造(ハチの巣構造)であるのに対して、ボロフェンではホウ素原子が三角形の格子状に並び、その単位構造の中心部に六角形の空孔ができるとされる。実際にボロフェンが合成できるようになったのはつい最近のことであり、2015年12月、ノースウェスタン大学とアルゴンヌ国立研究所のチームが初めてボロフェン合成実験に成功したと報告していた。

今回研究を行ったのは、同大でボロフェンを初合成したのとは別のチームであり、ボロフェンと異種材料との一体化に取り組んでいた。銀基板上にボロフェンを合成し、その表面に有機材料(PTCDA: ペリレン-3,4,9,10-テトラカルボン酸二無水物)を堆積させる実験を行ったところ、銀基板の表面にボロフェン領域とPTCDA領域が横方向にきれいに分かれ、界面が形成される現象が発見された。

PTCDAをボロフェン上に置くと、ボロフェンを避けるようにして、ボロフェンが形成されていない銀表面部分にPTCDAが拡散し、ボロフェン領域とPTCDA領域が隣り合った状態が自然に作られることが発見された。2つの領域の境界上にできた界面の性質を調べたところ、X線光電子分光法による分析から、ボロフェンとPTCDAのあいだに弱い化学的相互作用があることが確認された。また、高真空の走査トンネル顕微鏡法による分析からは、界面部分で電子的性質が急激に分離していることが確認された。

このように性質が異なる材料とボロフェンの間できれいな界面が容易に得られ、ヘテロ構造を形成できるということは、ボロフェンをダイオードや太陽電池その他のデバイスに応用していく上で重要な知見であるといえる。ボロフェンの性質はまだよくわかっていないことも多く、応用に向けたさらなる研究が期待される。研究チームでは、次の課題として、ボロフェンを銀基板ではない電気的に不活性な材料上に形成し、銀の影響を排除してボロフェンの電気的特性を調べることを挙げている。