市場調査企業である台湾TrendForceは、スマートフォン(スマホ)で使用される主要コンポーネントであるモバイルDRAM、モバイルNAND型フラッシュメモリ、有機EL(AMOLED)パネルの価格高騰が2017年も継続していく可能性があるとし、新製品の提供に向け、在庫の積み増しを狙っているスマホメーカーの利益を圧迫するリスクとなるとの見解を公開した。
供給不足のモバイルDRAM価格は年間で10%以上上昇
スマホメーカーがデュアルレンズカメラやビデオストリーミング、人工知能技術に基づいたサービスといった最新技術を搭載してアップグレードを図ろうとすることが予測される2017年、スマホに搭載されるDRAM容量が引き上げられ、上半期中にも6GBまたは8GBのDRAMを搭載した旗艦スマホが市場に登場する可能性があるという。そのため、DRAM市場の需給バランスがひっ迫し、モバイルDRAMの価格も2017年を通して上昇が続き、同社では年率で10%以上の値上げとなるとの予測をしている。
eMMC/UFSも需要増で年末まで価格上昇が継続
同様に、スマホ1台あたりのメモリ容量の増加傾向を受けて、eMMCおよびUFSの価格も上昇を続けている。中でも中国のスマホメーカーは、自社製品のストレージの仕様をiPhoneと併せる形で増加させることで競争を激化させており、 結果として、市場にあるほとんどの主要スマホのストレージ容量が32GB/64GBの選択から64GB/128GBの選択に移行しようとしているという。この競争の激しさはハイエンド製品のみならず、ミッドレンジやローエンドにも伝搬してきており、スマホメーカーはこれらの下位機種のストレージ容量も拡大する必要に迫られるようになってきているという。
TrendForceでは、2017年にeMMCよりも高い性能を発揮できるUFSの採用が加速すると予想。同社は、スマホ市場におけるUFSの採用率は、2017年で20%程度と予測している。また、価格面では、eMMCとUFSともにピークに近づいているとの見通しで、第2四半期は前四半期比で平均で5~10%という穏やかな上昇が見込まれているが、NANDそのものの供給不足が続くことから、年後半はさらに価格が上昇する可能性があるとしている。
パネル価格高騰でも有機ELを搭載するスマホの台数は増加
スマホ用ディスプレイ市場では、Appleや主要ブランドからの需要が高まっている有機ELに注目が集まっている。これに関連して、同社のディスプレイ市場調査部門WitsViewは、世界のスマホ出荷台数のうち有機ELモデルのシェアは2016年の23.8%から2017年には27.7%に拡大すると予測している。一方、LTPS(低温poly-Si)LCDパネルの生産能力も増加しており、こちらも2016年の31.5%から2017年は34.8%に拡大すると予測しているが、これらの技術におされて、技術がこなれているa-Siディスプレイを搭載したスマホのシェアは2017年で37.4%に留まるとしている。
また、スマホ用の有機ELパネル市場をほぼ独占しているSamsung Display(SDC)だが、その製造したパネルのほとんどはグループ会社のSamsung ElectronicsならびにAppleで分けあう予定だという。このためSDCは、この2社以外のブランドからの需要にこたえることがほとんどできなくなることが予測されるため、TrendForceでは、有機ELパネルの価格は供給不足の影響から、年後半も上昇傾向が続くとしているが、スマホ向けLTPS液晶パネルは、生産能力の拡大が進むことから、第2四半期より徐々に下がり始めると予測している。
なお、TrendForceでは、主要コンポーネントの高騰が、スマホの製品コストそのものを引き上げるため、スマホメーカーは健全な利益率を維持するのが難しくなると指摘。中国ブランドの低価格ながらハイスペックなデバイスで消費者を魅了する戦略も利益が低下してしまえば、その効果は薄いものになる可能性があるとしている。