SAPジャパンは3月2日、代表取締役社長の福田譲氏による説明会を開催した。説明会では、2016年のビジネスの総括、2017年の事業戦略について説明が行われた。
日本は6年連続で売上最高額を達成
初めに、福田氏は2016年の売上について言及した。グローバルでは220億6700万ユーロ、日本では8億2500万ユーロの総売上を達成、クラウドとオンプレのいずれも成長しており、堅調な1年となった。日本においては、クラウドの新規受注が前年比139%増、買いきりのソフトウェアライセンスの売上が同14%増となり、4年ぶりに売上の2ケタ増を達成したという。
福田氏は「われわれはオンプレもクラウドも成長している珍しい企業であることを強調したい」と述べた。
同社は2年前にクラウドビジネスにシフトする計画を発表。同計画では、2017年・2018年において、クラウドビジネスが既存のビジネスを凌駕することを見込んでいるが、順調に推移しているという。福田氏は「既存の事業をシュリンクしながらクラウドにシフトしているのではなく、全体にビジネスの規模を拡大しながらクラウドへのシフトが進んでいる」と説明した。
同社は「デジタル元年」への対応を2016年の事業戦略に据えていたが、「2016年はデジタル変革の重要性が浸透した。ビジネスそのものがIT化していくということが、市場に浸透した」と、福田氏は語った。
2016年に注力した取り組みとして、Design thinking(デザイン思考)が紹介された。Design thinkingの確固たる定義はないが、「顧客視点による問題理解」「問題を解決するための多様なアイデアを用意」などのプロセスを経てイノベーションを生み出すプロセスを言う。2020年に向けた中期計画も、Design thinkingに基づいて作成したそうだ。
2017年はデジタル変革、フルクラウド化、社内の人材強化がカギ
そして、2017年の事業戦略は「経営層に向けたデジタル変革」「企業システムのフルクラウド化」「SAPジャパンの変革支援力の強化」の3つの柱から構成される。
福田氏は「デジタル変革」の取り組みの特徴として、顧客と共にソリューションを作り上げていることを挙げた。
「われわれは自分たちがよいと思う製品を押し付けるのではなく、物事の本質をとらえ、顧客が望むソリューションを提供している。われわれは昔から、物事を因数分解して、その要素を横展開が可能なソリューションにパッケージ化するという手法をとってきたが、今でも変わっていない」
また、変革を志向する企業と人のコミュニティを形成することをサポートするため、昨年から「Business Innovators Network」を実施している。「イノベーターは企業で孤独に戦っている。だから、Business Innovators Networkにより、社外のイノベーターとつながることができる横のネットワークをサポートする」と福田氏。
「企業システムのフルクラウド化」については、リアルタイムERPスイート「SAP Business Suite 4 SAP HANA(S/4 HANA)」を軸に推進する。S/4 HANAは、インメモリープラットフォーム「SAP HANA」を基盤としており、UIはSAP Fioriによって実現している。「S/4 HANA」は同社の主力製品であることから、グローバルで4000名の開発体制を敷いており、4半期ごとにアップデートが実行されているそうだ。
S/4 HANAは、顧客のさまざまなニーズに対応するため、オンプレミス、 SAP HANA Enterprise Cloudから、S/4 HANA Cloud Private Option、S/4 HANA Cloud Public Optionと4つの導入手段を提供している。ただ、福田氏は「オンプレミス、クラウドのどちらでもかまわないのであれば、クラウドをお勧めする。なぜなら、戦略的にITを使っていくには、導入がスピーディーで、初期コストが抑えられるクラウドを利用したほうがいいからだ」と語った。
実際に基幹システムをクラウド「SAP HANA Enterprise Cloud」に移行した企業の例として、三井物産が紹介された。
社内の人材強化については、100名規模でサービス部門の人材を増員していく。また、グローバルの教育プログラム「SAP Academy」に、新入社員だけでなく、既存の社員も派遣していくという。
さまざまなベンダーが「デジタルトランスフォーメーションの実現」を掲げているが、SAPジャパンは「カスタマー・エクスペリエンス・センター」を開設し、顧客にデジタル・トランスフォーメーションを実際に体験できる場を提供している。
2017年、同社のデジタル・トランスフォーメーションへの取り組みがどのように花開くか、期待したい。