arcserve Japanは3月1日、統合バックアップ・リカバリ製品の最新版「Arcserve Unified Data Protection v6.5(UDP v6.5)」と「Arcserve Backup r17.5(Backup r17.5)」を発表した。
UDP最新版ではクラウド対応を強化し、災害発生時にAmazon EC2上にWindows環境やLinux環境をバックアップし即座に事業継続できるようにした。また、バックアップサーバなしでAmazon S3に直接バックアップできるようになった。
さらに、アシュアードリカバリーと呼ばれる、バックアップデータが適切にリカバリーできるかを確認したうえでリカバリする新機能が加わった。アシュアードリカバリーを用いると、バックアップミスによってリカバリーができないトラブルを回避することができる。
最新版の発表にあたり、米arcserveのCEO(最高経営責任者)、マイク・クレスト(Mike Crest)氏が来日。arcserve Japan 社長 江黒研太郎氏と、ソリューション統括部 プリンシパルコンサルタント 渡邊結子氏とともに、Arcserveのビジョンやビジネス状況、新製品のポイントを解説した。
まず、江黒氏が、日本のビジネス状況について「ひとことで表すと、ビジネス状況は非常にいい。アプライアンスとライセンスが大きく成長。大型案件を複数受注したことで前年比37%の成長を遂げた」と報告。特に、ターゲットとする市場が小規模から中規模へと順調に拡大しており、そうした企業から「信頼を勝ち得た結果だと捉えている」と振り返った。
具体的には、アプライアンス販売は、ドン・キホーテや霧島酒造など多くの企業に採用され、初年度100台の目標を達成した。今後、容量を24TBに倍増した新モデル「Arcserve UDP 7320 Appliance」の国内提供も予定している。
売上を牽引した理由の2つめは、ハイバーコンバージドインフラのバックアップ案件が増加したこと。パートナーからも「アプライアンスを含めて仮想統合基盤のバックアップに適している」と評価されていることを強調した。
3つめの理由として、マネージドサービスプロバイダ(MSP)での採用が増えたことを挙げた。現在65社で導入しており、クレオネットワークスの事例では「容量課金ライセンスを活用しコストを半減させたことや、MSPプログラムでリードタイムを5分の1にした」などの成果が出たとアピールした。
続いて、クレスト氏が、グローバルでの実績と、企業のビジョンを解説した。グローバル売上高は、新規売上が昨年比で17%増と好調で、特に、ヨーロッパは36%増、北米は17%増、日本は11%増と、各エリアで伸びているという。「CAから独立して2年半経ち、成果が数字として表れている状況」だという。
「市場には3つのトレンドがある。データ保護、災害復旧とクラウド、アーカイビングだ。データ保護はランサムウェア対策としてバックアップが注目されるなど、2019年までに6%成長を続ける見込みだ。災害復旧とクラウドは、DRaaSとしてニーズが急増している。2016年に17億ドルだった市場規模は、2012年に111億ドルへ急成長する。3つめのアーカイビングも、コンプライアンスや長期保存のニーズを受けて市場が広がっている」
クレスト氏は、この3つのトレンドは日本でもほぼ同じ傾向だとし、この3市場で、製品の強みを生かしていくとした。
「Arcserveの製品は大規模環境に適した機能をもちながら、決して高いコストを必要とせず、シンプルで簡単な運用を支援するものだ。高品質な製品をエンドトゥエンドに届けることを心がけている。データ保護ソリューションを、万全のサポート体制で提供できるのは日本ではわれわれだけだと自負している」
続いて、 渡邊氏が、最新版の機能強化点や新機能を具体的に解説した。UDPv6.5の2大強化点は、冒頭で触れたクラウド対応とアシュアードリカバリ機能の提供だ。
クラウド対応では、バックアップデータからあらかじめ仮想マシンを作成しておくことで災害に備える仮想スタンバイ機能がAmazon EC2に対応した。仮想スタンバイにより、リストア時間が不要になり、平常時は仮想マシンを稼働させないことで、低コストで災害対策、事業継続が可能になる。
また、バックアップデータのクラウド保管について、従来の認定済みクラウドに加え、Amazon S3およびプライベートクラウドなどのS3互換クウラドストレージに対応した。Windows OSの復旧ポイントをS3/S3互換ストレージ上にコピーしたり、ファイルをS3/S3互換ストレージに直接バックアップしたりできる。
このほか、Office 365のメールデータ(Exchange Online)のオンプレミス環境へのバックアップや、EC2インスタンスからオンプレミス環境へのリカバリなどにも対応した。
2つめのアシュアードリカバリは、破損したバックアップデータをリカバリしようとして正しく復旧できない事態に対応する機能だ。バックアップデータを本番データと同じ状態であるかを自動的に確認し、復旧できないという事態を回避する。
バックアップデータがリストア可能かどうかを明示的に確認することもできる。この場合、インスタントVMと呼ばれる仮想マシンを起動し、サーバのサービスが実行できるか、スクリプトを使ってアプリケーションのサービスについて整合性がとれているかなどを確認する。また、仮想ディスクを参照して、ディスク破損がないかchkdskをかけたり、スクリプトで特定ファイルの読み出しを行ったりする。この確認のためにディスクスペースは必要なく、短時間でだれでも簡単にチェックできる仕組みだという。
このほか、RPO(目標復旧時点)やRTO(目標復旧時間)をグラフなどを使ってわかりやすく表示するレボート機能も備わった。実際の復旧時間と、目標の復旧時間を比較した結果が色分け表示され、バックアップ・リカバリ運用を支援する。
一方、Backup r17.5では、クラウドストレージへの直接バックアップ機能が備わった。仮想テープライブラリ(Amazon Storage Gateway VTL)を用いて、テープと同様の運用でクラウドストレージに直接バックアップすることもできる。その際、S3からGlacierへの移行もサポートする。
また、UDP、Backupとも、Windows Server 2016をサポートした。価格は、UDP v6.5が10万円(税別、1年間の保守サポート含む)から、Backup r17.5が15万円から(税別)。Arcserve UDP 7320 Applianceは640万円(税別、5年間の保守サポート含む)。