2016年12月、羽田空港では、ロボット技術の活用が不可欠だとして、国土交通省および経済産業省との連携の下、「Haneda Robotics Lab」を開設した。
Haneda Robotics Labでは、ロボットの技術検証を行うため、羽田空港でロボット製品(プロトタイプ含む)の実験導入を行う「羽田空港ロボット実験プロジェクト 2016」を開始。同プロジェクトの下、2016年12月15日から2017年2月13日にかけて、羽田空港第2旅客ターミナルにおいて、第1期参加事業者17社により、清掃ロボット、移動支援ロボット、案内ロボットの3つのカテゴリーに属するロボットによる実証実験が行われた。
本稿では、Nextremerの案内ロボット「MINARAI」のデモの模様をお届けしよう。
会話が破綻したらAIから人間にバトンタッチ
「MINARAI」は高度な自然言語処理機能を有するAIを活用した対話システムで、ロボットやデジタルサイネージ、タブレットなど、さまざまなデバイスに搭載可能だ。「AIと人との協業」をコンセプトに据えている。
MINARAIの基本的な流れはこうだ。ユーザーがマイクに向かって話しかけると、対話エンジンにより自動で応答する。意味が通じない会話が2回以上繰り返されると、会話が破綻したと見なし、人間のオペレーターに会話を引き継ぎ、対話を継続する。オペレーターとの会話はカメラを通じて、お互いに表情や様子を見ながら行うことができる。その際のインフラはブイキューブの映像・音声配信の通信インフラが用いられている。
そして、ユーザーとオペレーターという人間同士の会話パターンをAIが学習することで、より高度な対話を実現する仕組みとなっている。また、ユーザーの性別と年齢を検出するため、日本マイクロソフトのCognitive Services:FaceAPIを導入しており、今後はユーザーごとに対話内容を最適化するなどの機能連携も図っていくという。
空港のデモでは、タッチ操作に対応したデジタルサイネージにマイクとビデオカメラを接続、画面ではユーザーが親しみやすいように、博士と助手というキャラクターがユーザーの質問に回答する形態となっていた。
ユーザーがマイクに向かって話すと、その内容が画面に表示される。続いて、質問に対する回答がキャラクターによる会話形式で表示され、トイレの場所など、地図データを持っている場合は同時に表示される。
トイレの場所、航空券を買う場所など、定番の質問にはスラスラと回答していった「MINARAI」だったが、「仙台空港から仙台駅までどうやって行ったらいいですか」と聞いたところ、会話が詰まってしまった。そこで、「会話が破綻した」状態と見なされ、Web会議サービス「V-CUBE」で接続していたNextremerの高知オフィスにいるオペレーターにつながった。
デモ中に、高知から出張のために上京したという人がブースに立ち寄り、オペレーターの方との会話を楽しんでいた。
AIが人間の働き方改革に貢献する世の中に
NextremerではさまざまなAIの研究開発を進めているが、ビジネスディベロップメントを担当する河合泰伸氏は「現状のAIにすべてをまかせるのは、技術とコストの面で成立しません。実用性を考えると、オペレーターが必要になります。MINARAIではAIは人を助けるという立場で、人と協力していくというコンセプトをとっています」と話す。
「MINARAI」は日本語と英語に対応しているが、日本語以外の言語によって応対する機能の開発に注力しているという。河合氏は「AIによって、音声を解析してどの言語かを判断することは難しい」と語る。
また、ブイキューブの広報担当の大鳥由紀子氏によると、今回Nextremerと協業した理由は働き方改革に関する取り組みの一環だという。
「当社はWeb会議で実現するビジュアルコミュニケーションにより、オフィスワーカー、営業、現場の働き方を改革したいと考えています。MINARAIでは、高度な自然言語処理機能により空港の案内業務をAIが代わることで、1人のオペレーターの方が複数のMINARAIを監視することが可能になり、生産性を向上します」
なお、Nextremerとブイキューブは昨年9月に、高知銀行で銀行受付におけるAIを活用した対話システムの実証実験を実施しているほか、Nextremer単独ではNEXCO東日本と関越自動車道高坂SA(下り線)においてAI活用の「対話接客システム」の実証実験を行っている。