うつ病の人は世界で推計3億2,200万人に上るとする報告書を世界保健機関(WHO)がこのほど公表した。報告書は、うつに苦しむ人が全世界人口の4%を超えながら、その多くは正しい診断や適切な治療を受けられていないと指摘し、早急な対策の必要性を訴えている。

図 WHOのうつ病などに関する報告書の表紙(WHO提供)

報告書によると、うつ病の人は2015年時点の世界総数推計で3億2,200万人に達し、05年比で18%以上増加した。地域別分布比ではアジア・太平洋地域で世界全体の約48%を占め、アメリカ地域は約15%、欧州地域は約12%だった。年齢別では55~74歳の発症率が高かった。女性はどの世代でも男性よりも発症率が高く、特に60~64歳の女性は全人口比で8%近くがうつに悩まされている。

国別推計でアジア地域を見ると中国が約5,482万人と際立って多く、次いで日本が約506万人、フィリピンが約330万人だった。推計人数で千万台だったのは、インドの約5,668万人、米国の約1,749万人、ブラジルの約1,155万人など。人口比率が高かったのは、ウクライナ、エストニア、米国、ブラジル、オーストラリア、ギリシャ、ポルトガルなどでいずれも人口比6%前後。日本と中国はいずれも同約4%だった。

2015年の世界の自殺者は推計約78万8千人で、15~29歳の若年層では自殺が死亡原因の2番目を占め、自殺の主要因がうつ病だったという。

報告書はまた、うつ病治療は進歩していながら、治療を適切に受けている人は世界的に見ても少なく、適切な診断や治療を受けている人の割合が10%に満たない国が発展途上国を中心に多いとしている。

WHOは、多くの国でうつ病に代表される精神疾患に対する社会の偏見がある上、医療従事者が不足しているなどと問題点を指摘。若年層を対象に地域、学校ごとに予防プログラム実施する重要性などを強調している。予防プログラムには「うつにならないように周囲の環境に対する(ゆがんだ)認知や思考方法を自分自身で変えていく訓練(認知療法的訓練)」などがある。

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