アバナードは2月16日、今後数年の技術動向を予想するレポート「Avanade Technology Vision 2017」を発表したことに伴い、同レポートの内容に関する記者説明会を開催した。説明会では、来日した米Avanade CEOのAdam Warby氏が概要を説明した。
アバナードは、2000年にアクセンチュアとマイクロソフトのジョイントベンチャーとして設立され、Microsoft Dynamicsを中心にERPシステムを提供する。
説明会冒頭、Adam Warby氏は、「Avanade Technology Vision 2017」の重要なテーマはAIだとし、次のように述べた。
「企業は2020年に向けてAIを投入しなければならない。今回のメッセージは、『企業はAIファーストの準備ができているのか』というものだ。Technology Vision 2017では、顧客やパートナーに、テクノロジーによってどのようなインパクトがもたらされるのかを理解してほしい。欧米ではAIに対して恐れがあるが、われわれはAIを前向きに捉え、経済や社会を新しいフェーズに突入させることができると思っている。AIをインテリジェントな自動化と考えてもいいのではないか。企業はいますぐAIの活動を開始すべきだ。それだけ、AIは大きなインパクトをもたらすものだ」(Adam Warby氏)
「Avanade Technology Vision 2017」では、企業が今後訪れる新時代に対応するために取り入れるべき5つのテーマとして、
・「新しいユーザーエクスペリエンス: 操作をより意味深く、魅力的なものに」
・「従業員の強化: 人間の能力を新たなレベルに引き上げる」
・「プラットフォーム・エコノミー: 新しいエコシステムから飛躍的に大きな価値を得る」
・「DesignOps: 生み出す成果をゼロから見直す」
・「デジタル倫理: 明確に意識して未知のものに取り組む」
の5つを挙げており、Adam Warby氏は、このうち「従業員の強化」「DesignOps」「デジタル倫理」の3つについて説明した。
「従業員の強化」については、「インテリジェンスを職場で活用することで、仕事の質を改善できる。アジアのある顧客は、ネットワークの中にインテリジェンスがあることで、ネットワークの中のどのデバイスに問題があるのかを把握している」と指摘。
「DesignOps」については、「今後は、これまでと違う思考形態が必要だ。これには2つの重要なテーマがあり、1つはヒューマンセントリック、(人間中心)であること、もう1つはスピードだ。コンセンプトからいかに早くアクションに移するかという、これまでより、早いスピードが求められる」と説明した。
そして、「デジタル倫理」については、「あらゆる企業の関係者や社会は、デジタル倫理を真剣に考えていかなければならない。『これはできるが、本当にやるべきなのか』という風に考えれば、デジタル倫理は簡単に考えることができる。たとえば、自動運転技術であれば、この技術はドライバーを助けるためのものなのか、あるいは歩行者を助けるためにあるのかを考えるべきた。デジタル倫理は、企業がそれぞれの環境の中で、具体的な事象に落とし込んで考えるべきだ。企業は、会議の情報やEメールなどの情報を分析していくにあたり、それを公開すべきなのか、それによって社員の優劣をつけるべきなのかどうかを考える必要がある」と語った。
同席したアバナード 代表取締役社長 安間裕氏はAIについて、「今話題となっている残業なども、AIが助けていくことは間違いない。すでに、残業をロボットにやらせようという時代に来ている。RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)らRDA(ロボティック・デスクトップ・オートメーション)などどよく言われるが、われわれの解釈では、個人の自動化がRDAで、人や会社をまたいだ大きなプロセスの自動化がRPAだ。これらが残業をロボットにやらせるものの第1歩になることは間違いなく、今、引き合いが非常に多い。2-3年後には、業務プロセスを設計する際に、『この業務はAIにやらせよう』ということが当たり前のように議論されるようになる。そういう考えをしなければ、企業は今後訪れるであろうニューワールドについていけない」と述べた。
さらに「DesignOps」については、「AIには、今人間がやっていることをロボットにやらせようという考え方と、AIを使えば、今人間ができないことでもロボットならできるのではないかという2つの考え方がある。後者のような新しいビジネスを考える上では、従来の要件定義のようなやり方ではなく、DesignOps的な考え方で行い、考えたアイデアの中で、一番現実的なものは何か、一番早くマーケットに投入できるものは何かなど、時間、スピード、インパクト、そのために使う労力を総合的に考えていかなければならない。それには大きな創造性が必要なため、DesignOps的な考え方を導入しなければ、AIワールドにはついていけない。これまでのように、要件定義をインタビュー型で行うことは終わっていく。3年後には、DesignOps的な考え方で、何か一番重要で、現実的で、インパクトがあるかを考えることが、システム開発や製品開発においても当たり前になっていく」と語った。
そして同氏は最後に、企業に向け「海外では、AIが仕事を奪うといわれているが、日本は今後人口が減少していくため、AIを活用しないと労働力を確保できない。そのため、ロボットによる新しい労働力が日本に求められている。AIファーストの時代は2-3年後に間違いなく来るので、AIファーストの世の中が来たらどうしようではなく、AIファーストの世界が来ればワクワクするね、いう風に捉え、どう対応していくかを考えるのが、今回のTechnology Visionのメッセージだ」とアドバイスした。