大日本印刷(DNP)は2月23日、次世代の3次元構造のNAND型フラッシュメモリ(3D NAND)の実現などに向け、ナノインプリントリソグラフィ(NIL)用テンプレートの複製装置を2017年3月に導入し、回路線幅10nm台のテンプレートを供給する計画を明らかにした。
現在、半導体のリソグラフィ工程では、液浸ArFが活用されているが、さらなる微細配線の実現に向けて、EUVの開発が進められてきた。しかし、技術が複雑になるのに併せて装置価格も高騰しており、製造コストと採算のバランスをどのようにとるのか、といった問題が生じていた。そのような状況の中でNILは、回路が刻まれたマスターテンプレートから複写されたテンプレートをウェハに当てるなどして転写するだけで、ウェハ上に回路を構成することができるため、製造工程の簡略化、低価格化が期待されてきた。
同社は2003年より半導体向けNIL用テンプレートの開発を行ってきており、東芝やキヤノンと共同でNILのプロセス開発を進めてきている。2016年からは、次世代半導体に向け、回路線幅10nm台の半導体向けテンプレートの生産体制の構築に向けて、高解像度のマルチEB(電子ビーム)描画装置やドライエッチングなどの関連プロセス装置も含めて、総額40億円の設備増強を進めている。
今回の計画は、そうした一連の動きの最終段階として位置づけられるもの。3D NANDの需要増加と低コスト化に対応するために、キヤノン製のナノインプリント用テンプレート複製装置を導入し、東芝への回路線幅10nm台の半導体向けの量産供給ラインを構築、テンプレート供給を本格的に開始することで、10nm台のテンプレートを安定的にマスターテンプレートから複製、提供することが可能となり、半導体メーカーの製造プロセスの簡略化やコストダウン支援が可能になると同社では説明している。
なお同社では、同テンプレート供給により、2019年には年間100億円の売り上げを目指すとしており、今後もテンプレートの需要増とプロセスのさらなる微細化や製造コスト低減に向けた開発や生産体制の強化を図っていくとしている。