スイマーが泳いでいる時の水の抵抗は泳ぐ速さ(泳速)の3乗に比例するー。筑波大学と東京工業大学の研究グループは、スイマーが受ける水の抵抗の程度を正確に測定する方法を考案し、この方法を使ってこれまでは2乗と考えられていた泳速と抵抗との比例係数を修正した。研究グループは2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた競泳指導に役立つことを期待している。
筑波大学体育系の高木英樹(たかぎ ひでき)教授と東京工業大学工学院の中島求(なかじま もとむ)教授らの研究グループは、筑波大学内にある実験用回流水槽を使い、クロール、背泳ぎなどといった泳法の種類に関わらず、泳いでいるスイマーに作用する抵抗の程度を正確に推定する方法がないかという研究課題に取り組んできた。これまでは、スイマーが体を一直線に伸ばした時の抵抗(静的抵抗)や、上肢だけでクロールをして泳ぐ時の抵抗(動的抵抗)を測定する方法はあったが、実際に泳いでいるスイマーが受ける抵抗(自己推進時抵抗)を測定する方法はなかった。
研究グループは、実験用回流水槽内に、ある速さの人工的水流をつくってスイマーにクロールで泳いでもらい、その時の腕の回転頻度(テンポ)を記憶させた。次に、さまざまな速さの水流をつくり、その水流の中で記憶したテンポで泳いでもらった。それぞれの流速でスイマーに作用する抵抗を測定し、その値を解析して自己推進時抵抗を推定する方法を考案したという。
研究グループによると、競泳は泳ぐ時にスイマーが受ける抵抗との闘いで、どのようにして抵抗を減らすかが競技力向上を目指す上で最重要課題。100年以上も前からスイマーが受ける抵抗を測定する試みが行われ、これまでは泳速の2乗に比例して抵抗が大きくなるとされてきた。2乗と3乗とでは、泳速を向上させた場合にスイマーに作用する抵抗の程度はかなり異なってくるという。
この新しい測定方法はクロールだけでなくあらゆる泳法に適用できる。研究グループは「世界トップスイマーの自己推進時抵抗を測り、泳法技術の優劣を客観的数値で評価して泳法技術を改善するヒントを得ることができる」としている。
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