中国出張に出かける人が、FacebookやTwitterにそんな投稿をするのを見かけたことはありませんか。ご存知のように中国には、万里の長城(Great Wall)をもじった「グレート・ファイアーウォール」と呼ばれるネット検閲システムがあり、中国国内からアクセスできないサイト・ドメインが結構な数あります。
ブロック対象はメディアから個人ブログまで多岐にわたり、時期によっても変化します。利用者が多いグローバルなソーシャルメディアとしては「Facebook」「Twitter」など。日本人的には不便だなともちろん思いますが、それらに代わる“国産”ソーシャルメディアが盛り上がっている現状は、同時にちょっと羨ましかったりも。
中国では文化的背景や流通する情報の信頼性の問題などもあり、「クチコミ情報」依存度が非常に高い傾向があります。訪日中国人の「爆買い」トリガーになることもあるソーシャルメディアは、中国ビジネスにおいてネットを活用する場合、外すことのできない重要項目でしょう。
前回のポータル・検索サイトに続き、今回は中国の主要ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を見ていきましょう。
影響力大なネットタレントも続々誕生~中国版Twitterこと「微博(新浪微博)」
●微博(ウェイボー)
http://weibo.com/
「微博」とはもともと「微(小さな)博客(ブログ)」の略で、「マイクロブログ」などとも訳されるサービス形態を指す名称です。複数のネット企業グループが微博サービスを提供していますが、その中で最大のものが新浪の微博サービスです。日本のニュース等でよく「中国版Twitter」として紹介されるものもこの新浪の微博です。以前は「新浪微博」という名称でしたが、今は「微博」のみになっています。
2016年12月時点の月間アクティブユーザー数は2.97億人。
現状ではTwitterのグローバルでのアクティブユーザー数のほうが上回っていますが、伸び率から考えるとそろそろ逆転しそうです。
利用ユーザーの年齢層・学歴なども公式サイトでまとめて公開されていますので、お時間ある方はぜひご覧ください。デイリーのアクティブユーザー数だけでも日本の総人口を超えており、18歳から30歳が68.8%を占めています。
●2016微博用戸展報告(中国語のみ)
基本的な機能・使い方はTwitterと同様です。投稿は140文字以内(緩和の方向)。写真や映像をつけて投稿することも可能で、ライブ配信もできます。
・关注 フォロー
・私信 メッセージ
・粉丝 フォロワー(発音が「フェンスー」でファンの当て字)
・収蔵 投稿を保存
・转发 リツイート(転発=転送の意味)
・评论 コメント(評論)
・赞 いいね(賛同の「賛」)
興味あるユーザーアカウントのページ上部にある「+关注(関注=注目の意味)」をクリックすると、相手をフォローすることができます。フォロー後の表示は「已关注(フォロー中)」にかわり、自分のタイムラインにはフォローした人たちの投稿が時系列で一覧に並びます。#で挟まれたキーワードをつける「ハッシュタグ」機能も一緒です。
どんなハッシュタグが直近で盛り上がっているかはここでチェック。
●発見─熱門活題
どんな投稿が直近で注目されているかはここで。
●発見─熱門微博
影響力が大きなアカウントは下記ページで探すことができます。
「更多」をクリックすると全カテゴリーの一覧が登場します。
・互联网 インターネット
・时尚 ファッション
・汽车 自動車
・美妆 コスメ
・房地产 不動産
・医疗 医療
・更多 その他
漢字で理解できるカテゴリー名も多いでしょう。
影響力ランキングは、単にフォロワーの数だけでなく、投稿が読まれた数やコメント、リツイート数などで総合的に決定されています。
ツイッターでも同様の問題はありましたが、微博では対価を支払いファン数を増やす手法が浸透しており、人が実在していない非アクティブな「ゾンビ」アカウントが大量発生してしまったという経緯があります。こうした日々の投稿への反響も組み込んだ「影響力ランキング」公開の背景にはそんな事情もあるのでしょう。微博運営側でもここ数年、非アクティブユーザー排除やファン数水増しへの厳しい対策などを打ち出しています。
せっかくですから、そんな影響力大な人気アカウントの中からひとつピックアップして見てみましょう。
●回憶専用小馬甲的微博
このアカウントは、粉丝(ファン)数2700万以上。そんな母数ゆえ投稿への反応も早くかつ大きく、わずか一日ほどで、転送・コメント・いいねが数千に上ります。「热门」でホットな投稿を見るとコメントだけで1万を軽く超えているものも。
もちろん日本人でも、メールアドレスと携帯電話番号でアカウント開設が簡単にできます。アカウントを開設し、人気微博ユーザーや日本企業アカウントなどをフォローしてみるのもいいでしょう。「weibo 登録方法」で検索すれば、日本語での丁寧な登録画面開設記事がたくさん出てきます。お時間ある時にぜひ挑戦してみてください。
中国ネットユーザーの多くが利用するコミュニケーションツール「QQ」「微信」
日本でも10~20代中心にユーザーが急増し、どっぷりはまる人も多数の「LINE」。中国でこれに該当するのが「QQ」そして後で紹介する「微信(WeChat)」です。サービスカテゴリーとしては「インスタントメッセンジャー」あるいは「オンラインメッセージサービス」などと呼ばれるもの。
運営しているのはどちらも中国を代表するIT企業グループのひとつ「騰訊(テンセント)」で、QQのスタートはLINEより早い1999年。中国国内での普及率は非常に高く、2016年9月時点の月間アクティブユーザー数は8.77億人に上ります。既に天井に達しているのでしょう、増加率は2%程度とほぼ横ばいです。
基本は個人間のメッセージのやりとりでクローズドなコミュニケーションですが、複数人でグループを作りメンバー間でチャットすることも可能です。
また企業用のアカウントもあります。
日本では飲食店や娯楽施設などで盛んに「LINE割」が行われており、LINEで企業・店舗アカウントを友達追加するとクーポン配布など行うキャンペーンも展開されていますよね。同様にQQも企業のマーケティング目的での利用が活発に行われています。顧客向けのプロモーションメール一斉配信はもちろんのこと、商品購入・サービス利用申し込み検討中のユーザーからの問い合わせや値段交渉からサポートまで、QQがフル稼働となります。
日本と中国ネット事情、大きく異なることの一つがおそらく、企業と顧客の間での「ダイレクトチャット」活用度でしょう。私自身、中国滞在時にはつたない中国語でQQを使った企業担当者とのやりとりを何度も体験しています。
中国語のみになりますが、そうした企業のQQビジネス活用についてはこちらが参考になります。
●騰訊企業産品
http://b.qq.com/
自動翻訳なども使えばある程度理解できるのではないでしょうか。
もうひとつ「QQ空間」というサービスもあります。
●QQ空間(コンジエン)
http://qzone.qq.com/
こちらはオープンな情報発信の場で、ブログでもあり、友人や興味ある人のアカウントを「好友」登録してお互いの日記を読みコメントなどするという点では、Facebook・Twitterなどとも共通するソーシャルネットワーキングサービス(SNS)的な要素も持っています。
騰訊グループが運営するもうひとつのコミュニケーションツールで、今、中国のスマホユーザーにとって「なくては生活できない」不可欠アプリが「微信(WeChat)」です。初対面の際、携帯電話番号やメールアドレスより先に「微信やってる?」と聞かれることが多いほど定着しています。ちなみに数年前までは「QQ番号教えて」でした(QQアカウントは9桁の数字)。
●微信(ウェイシン/WeChat)
https://weixin.qq.com/
QQよりはずっと新しく、スタートはLINEと同じ2011年。
パソコンでの利用から始まったQQに対し、微信はスマホアプリでの利用が中心となっています。最近ではQQより微信を友人とのやりとりのメインに据えている人も多く「中学・高校の頃にはQQで友達とやりとりしていたけど、卒業して今は周りもみんな微信」などと、QQは一昔前のプラットフォームと語る人もいます。QQから微信への移行は「トレンドの変化」という要因も大きそうです。
使い方もLINEとほぼ同じです。
友人を追加するには、スマホ住所録を連携させたり、あるいはQRコードスキャンや同時に同じ操作をする(LINEの「ふるふる」に相当・下記画像)などの方法があります。
メッセージが届けばスマホ上に通知が表示されるので、メールより即時性の高いコミュニケーションが可能となります。友人間やサークル・同窓生同士でオンラインチャットを楽しんだり連絡を取り合うためのグループを作成したり、「近くにいる人」を探す機能なども。
微信に関して押さえておきたい重要な機能がもうひとつあります。
また日本ではまだそれほど普及していないSNS決済サービスが、中国ではしっかり定着している状況をご存知でしょうか。なかでも若年層のカバー率が非常に高い微信の「微信支付(WeChat Pay)」は、飲食代の割り勘から立替金の返済、さらには子供へのお小遣いに至るまで、日常生活の中で当たり前のように活用されています。
これは先月の春節(旧正月)の際の「微信紅包(ホンバオ)」、つまり「(オンライン)お年玉」の受領一覧の画面です。
金額を見ると0.12元など非常に少額ですが、単に「新年快楽(おめでとう)」とテキストメッセージを交わすだけでなく、少額のお年玉を交わしあって盛り上がるというもの。塵も積もれば……と言いますが、微信ユーザーの月間アクティブユーザー数は既に8億人超。2017年の春節期間中(1/27~2/1)に飛び交った「紅包」は460億件※にも上りました。総額がいかばかりなのか、非常に気になります。
もちろん個人間決済だけではありません。 中国では、リアル店舗でも「微信支付」を受け付けているところが日に日に増えており、飲食店や商店でも、スマホさえ持っていればキャッシュレスです。この微信支付は、日本でも訪日中国人客の利用が多いラオックスが昨年夏から導入し、今後も広がっていくことでしょう。
中国語だけですが、「微信支付」の企業向け公式プロモーション映像を見ると具体的な活用シーンがイメージしやすくなります。後半に日本の居酒屋も登場しますので、お時間ある方はちょっと見てみてください。
●是什么改变了3亿人的生活方式 – 8.8无现金日 – 腾讯视频
このように、友人とのコミュニケーションから個人間決済、そしてリアル店舗やオンライン取引でのキャッシュレスの支払いにも活用され、ユーザーの依存度の高いプラットフォームである微信。企業のマーケティングツールとしても当然高い注目を集めており、スターバックスなど、微信を活用したキャンペーンで多くのファンを獲得し成功を収めており、またファッションブランドでも積極的に活用されています。
●中国を「WeChat」で攻略するラグジュアリーブランドたち:バーバリー、コーチ、シャネルの事例 | DIGIDAY
QQも微信も国際版アプリがでていますので、スマホアプリを入れれば日本語で簡単に利用開始できます。
在日中国人あるいは中国駐在日本人であれば両方あるいはどちらかのアカウントを利用している率は非常に高いでしょう。周囲で利用している人がいないかどうかヒアリングしてみて、まずは試しに使ってみることをお勧めします。
人人網
●人人網(レンレンワン)
http://www.renren.com/
Facebookに該当するのが「人人網(レンレンワン)」です。
非公開で実名制、レイアウトや内容もFacebookとほぼ同じものとなっており、微博が「中国版Twitter」と呼ばれるのと同じように「中国版Facebook」と紹介されています。
誕生背景もFacebookと同じで、当初は大学内のネットワークとして構築され、大卒中心に比較的高学歴の人が好んで利用するSNSとみなされていました。ただ、QQ・微信などの攻勢も影響しているのでしょうか、IT関連の記事などを読むと少々オワコン感(ブームが去り終わったコンテンツ)が漂っているような記述も見られます。
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以上、中国の主要ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)をご紹介いたしました。 ビジネスに直結するものもそうでないものもあると思いますが、とりあえず知っておき、ニーズが発生した際にすぐ活用を検討できる知識だけをまずは持っておくことは重要です。
ただしコミュニティー空間なだけに流行り廃りもあります。
ユーザーの年齢層にもある程度の偏りがあるのが通常です。中国大手サイトはどこも、利用ユーザーの属性や利用環境をかなり細かく定期発表していますので、それらデータも参考にしながら活用法を検討してみてください。
まずは「自分で個人的に体験」してみることをお忘れなく。
自身でユーザーとして使ってみてこそ、企業側からの最適なアプローチ方法も探れるというものです。
次回は広義でのソーシャルメディアということで、WEB2.0以前から存在する掲示板的サービスやクチコミサイトなどの主要どころをいくつかご紹介する予定です。
和田 亜希子(Akiko Wada)
都市銀行、検索エンジン等を経て2001年独立。企業からの受託でクチコミを活用したマーケティング、アフィリエイト・プログラム導入運用支援などを行うかたわら、「東京ビアガーデン情報館」「台湾温泉ガイド」などの専門サイトを企画運営。主な著書「アフィリエイト・マーケティング実践マニュアル(翔泳社)」「ひとつの ブログで会社が変わる(技術評論社)」「ミニサイトをつくって儲ける法(日本実業出版社)」。
本稿は、ソーシャルメディアマーケティングラボにて掲載された記事を転載したものです。
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