半導体市場調査企業である米国IC Insightsは2月16日(米国時間)、2016年の世界半導体企業における研究開発費支出額トップ10を発表した。
世界の半導体研究費の2割超を占めたIntel
2016年に半導体研究開発費をもっとも多く使った企業は、Intelで127億ドルだった。同社は2016年の売上高の22.4%相当を研究開発費に振り向けたことになり、2位以下を大きく引き離してダントツのトップとなっている。2位以下の3社(米Qualcomm、シンガポールBroadcom、韓国Samsung Electronics)を合計した研究開発費総額も上回るなど、他社の追随を寄せ付けない額となっており、その額は実に、トップ10社総額の36%に相当し、世界半導体企業の研究開発費総額(565億ドル)の23%に相当するほどだ。
同社の2016年の研究開発費の増加率は前年比5%増であるが、これは2011年以降の平均年間研究開発費支出の増加率9%を下回るほか、2001年以降の同8%をも下回る伸び率に留まっている。ただし、半導体のプロセス微細化を実現していく中で、開発コストは高騰し続けており、同社の研究開発費用の対売上高比率は過去20年の間に、1995年には9.3%であったものが、2005年に14.5%、2010年に16%、そして[2016年には22.4%と上昇を続けてきている。
表 2016年の世界半導体企業の研究開発費支出額ランキング(10億ドル以上支出した企業)。表の左欄から2016年順位、企業名、2016年の研究開発費出資額(単位:100万ドル)、2016年売上高に占める研究開発費の割合(%)、2016年研究開発費の対前年比増減(%) (出所:IC Insights) |
研究費売上高比率がトップとなる33%を記録した2位のQualcomm
半導体研究開発費支出額で第2位になったのは、業界最大のファブレスICサプライヤであるQualcommだ。同社は、2015年に英CSRとIkanos Communicationsを買収したが、この2社の研究開発費を加算した2015年のQualcommの研究開発費に比べて2016年のそれは7%減となった。しかし、研究費売上高比率は33%と、10億ドル以上の研究開発費を投じた上位13社中でもっとも高く、かつ3割を超す割合になったのは同社だけとなっている。この高い比率が同社が、IPで稼ぐ研究志向企業と言われる所以にもなっているといえる。
Qualcommは、2017年中にNXP Semiconductorsの買収を完了する予定になっているので、両社の研究開発費を単純合算するとIntelの1/2を超すところまで増え、2位の地位を固めることとなる。
SamsungやTSMCの研究費は売上高のわずか6~7%台
3位は2016年にAvago TechnologiesがBroadcomを370億ドルで買収して誕生した新生Broasadcom。そして、メモリのリーダー企業であるSamsungが29億ドル弱で4位となった。Samsungの研究開発費は2015年比で11%増となったものの。研究開発費売上高比率は6.5%ほどで、10億ドル以上の研究開発費を支出した13社中で最低比率である。とはいえ、2015年は同6.2%であったことを考えると、2016年はそこからわずかに増えたと言える。また、6位のTSMCも研究開発費売上高比率は7.5%と低く、トップ13社の同比率を見た場合、この2社を除く11社が2桁台となっており、売上高に対する比率の低さが際立っているといえる。
3D NAND開発に多額の研究費を費やす東芝
東芝は、3次元NAND型フラッシュメモリの研究開発に多額の支出をしたため、2015年の7位から順位を2つあげて5位となった。研究費売上高比率も27.6%と、Qualcommに次いで高い結果となった。また、7位には台湾のファブレスICサプライヤMediaTekがランクイン。8位には米国のメモリメーカーMicron Technologyが、前年の9位から順位を1つ上げる形でランクインした。
半導体の売り上げ低迷で研究開発費総額は横ばい
なお、世界半導体産業の2016年の研究開発費総額は、前年比1%増の565億ドルとなった。これは半導体研究費総額としては、史上最高額である。2015年も前年比1%増の562億ドルだった。業界全体の研究開発費支出の伸び率がこのところ1%と極めて低いのは、2015年の半導体産業の売上総額がマイナス成長となり、2016年もわずかなプラス成長に留まったためであるとIC insightsは分析している。