日本学術会議の大西隆(おおにし たかし)会長は16日、イスラム圏7カ国からの入国を禁止したトランプ米大統領令に対し「研究交流が妨げられるならば、科学技術の発展そのものが阻害される」などと懸念を示す談話を発表した。
トランプ米大統領は1月27日にイスラム過激派などのテロリストの米国内流入を阻止することを名目にイスラム圏7カ国からの入国を禁止する大統領令に署名した。米国内ではワシントン州がこの大統領令は違憲とする訴訟を起こし、同州の連邦地裁が大統領令を一時差し止める命令を出すなど混乱が続いている。このほか米国内外の各方面から批判や反対の意見が出されている。
こうした動きの中で国際科学会議(ICSU)は1月31日、「大統領令は、不適切に広範囲 に、かつ不公正に特定の国籍を有する人々に適用されている上、特に世界の科学者の自由な 交流に対して負の影響をもたらす」と懸念を示す声明を出した。大西会長の談話はまず「日本学術会議はこの声明を支持し、大統領令の持つ負の側面が米国内で是正される措置が取られることを期待する」とした。
談話はまた「日本学術会議は、世界の科学者の自由な交流が、我が国や世界の科学技術の発展に重要と考えている。この機会に改めて科学者の独立した活動に基づく研究活動の発展とその前提となる科学者の自由な交流がより豊かな人間社会の実現に不可欠であることを確認する」などとしている。
談話はICSUが出した声明を支持する形になっているが、日本学術会議が他国首脳の政治的判断に懸念を示すのは異例。ICSUは科学や科学の応用分野での国際活動や国際協力を進めるために1931年に設立された非政府機関でフランス・パリに本部がある。
関連記事 |