NTTは2月13日、2月16日~17日に東京都武蔵野市の「NTT 武蔵野研究開発センタ」で開催する「NTT R&D フォーラム 2017」の一般公開を前に、その内容を報道機関向けに紹介するプレスツアーを開催した。

NTT 研究企画部門 R&D ビジョン担当部長 黒川清氏

同フォーラムはNTTの最新 R&D成果を紹介するもので、今回のコンセプトは、『Open the Way~2020 とその先の未来へ~』だ。

ツアーの冒頭、NTT 研究企画部門 R&D ビジョン担当部長 黒川清氏は、NTTのR&D戦略について説明し、「安心・安全で豊かな社会の実現に向け、高臨場UX、AI、IoT、セキュリティ、ネットワークを重点分野として取り組んでいる。今後は新た場価値創造に向け異業種のパートナーとも強く組んでやっていきたい」と語った。

高臨場UXでは、イマーシブテレプレゼンス技術「Kirari!」を紹介。「Kirari!」とは、NTTが開発した次世代映像圧縮規格(HEVC)などと、新たに開発に着手した高臨場感メディア同期技術「Advanced MMT」を組み合わせて、映像・音声のみならず、人物の置かれた空間や環境の情報を伝送し、伝送先においてプロジェクションマッピング技術で、音とともに3D再現する技術。スポーツやエンターテインメントの公演などを、遠隔地へリアルタイムで伝送し、選手や演者を立体的な映像や音声で再現し臨場感多角再現することで、あたかも目の前で行われているような体感を実現する。

用途としては、スポーツのパブリックビューイング、舞台やコンサートのライブビューイング、講演、セミナーの遠隔中継などを想定している。

「Kirari!」を利用した映像

以下では、プレスツアーで紹介された、主な展示物を紹介する。

2.5D地図で立体的に目的地に案内

2020年を意識した技術としては、地下や建物などにおいて、上下階のつながりや、階段をまたいだ出入口、店舗、施設の場所などを立体地図(2.5D)で表示する技術を展示。平面の地図に高さ情報を加えるだけで、立体地図を生成する。3Dモデリングは不要で、既存のフロアマップ等から立体地図を実現できるという。また、透視表現と組み合わせることで、現地では直接見えない先の見通しも可視化できる。

2.5D地図表現技術とは

日産スタジアムの2.5D地図表現

現地では見えない階段も表現(右下の手に持たれた写真は実際現場の写真)

東京メトロでは、この技術を使ってとNTTと共同で2月1日~3月26日まで、駅構内ナビゲーションサービスと広告サービスの実証実験を実施する。この実験では、表参道駅周辺の目的地を設定し、改札付近の案内看板を撮影することで目的地までの道順を案内する「かざして駅案内 表参道版」と7駅に掲出している特定の広告ポスターを撮影すると期間限定の特典が受けられる「かざしてGET!」の2つが用意された。

アスリートの潜在脳を解明

フォーラムでは、脳科学により、野球選手のレギュラークラスと控え選手では、どのような違いがあるのかを明らかにしようとしていた。これは、実際に脳の動きを計測するのではなく、知覚、目の動き、呼吸、心拍、動作、筋活動から脳の動きを推測しようという試み。展示では、チェンジアップやカーブを打つことについて解析し、チェンジアップについて優れた打者は、リリース直後からわずか0.05秒でボールの軌道や投球フォームから球種を判断していることがわかったという。

チャンジアップをどう打つか

また、カーブについては、良い打者はボールががっきり見えない状況でもボールの正しい位置を捉え、早い段階で回転によるボールの位置のズレを修正していることがわかったという。

良い打者は球種にだまされない

AIを使ってドライバーのコンシェルジュを実現

AIの活用については、ドライバーの快適な運転をサポートする機能をデモしていた。

具体的には過去の移動軌跡を分析して目的地を予測し、途中の混雑状況や危険地域を警告したり、目的地付近の駐車場やレストランを予約するといったコンシェルジュの役割を果たすもの。これらはドライバーとの対話により実現し、対話にはインテリジェントマイク処理が行われ、外部の騒音を除外し、ドライバーの音声を的確に理解する技術が使われている。また、バイタルセンサーにより、ドライバーの心身の状態を推定し、注意喚起も行う。

目的地予測技術

心身の状態推定には、Heart-Touching-AI、混雑状況や危険地域の認知にはAmbient-AI、ドライバーの意図理解にはAgent-AIが利用される。

3つのAIを連携

ファナックと連携して工場のIoT化を支援

IoT関連では、工場内に製造設備に取り付けられたセンサーデータを処理するシステムを展示。これはファクトリーオートメーションを手掛けるファナックとの連携によって実現するもの。まず、センサーから上がってきたデータは、IoTデータ交流基盤により、アプリが読める形にデータを整形。これをエッジサーバ上のアプリで処理する。アプリは、Appストアのような機能をもつアプリ配信基盤から各エッジサーバに対して配信される。クラウドではなく、エッジ側のサーバでデータを処理することにより低遅延でデータを処理できるという。

全体イメージ

エッジサーバ

センサーデータをIoTデータ交流基盤で整形して上のアプリで処理

電気を通す布「hitoe」を医療に利用

フォーラムでは着衣するだけで心拍数・心電波形などの生体情報を取得できる機能素材"hitoe"を、医療で利用する取り組みも紹介されていた。これまでは「hitoe」はスポーツ用途が多かったが、今後は、関連する法律に適応させることで、医療分野でも利用していくという。これにより、日常生活をしながら、着るだけで心電計測が可能になり、患者の負担を軽減できるという。

全体イメージ