ルネサス エレクトロニクスは2月9日、同社マイコン「RH850ファミリ」、「RXファミリ」、「RL78ファミリ」および一部の車載用SoC向け開発環境として次世代オンチップデバッギングエミュレータ「E2エミュレータ」の提供を開始したと発表した。

自動車のエレクトロニクス化の進展により、ECUの搭載数が増加。そのため、それぞれのECUの動作時における消費電力を把握し、最適な制御プログラムを構築することが車載システムの低消費電力化にとって重要な要件となりつつある。

従来のECUにおけるソフトウェア開発では、制御プログラムのデバッグ時にプログラム修正が必要になった場合、毎回エミュレータからマイコンへプログラムをダウンロードする必要があり、プログラムサイズの増加によりダウンロード時間も伸びることが課題となっていた。また、CAN通信制御では、CANアナライザとエミュレータを併用するが、これまでは機器が連動しておらず、問題発生時の原因特定プログラムを制御プログラムに追加して、複数回の評価を行う必要もあったほか、低消費電力化の制御プログラムのデバッグでは、電流計とエミュレータの併用が一般的だが、ECUの動作時の消費電流と実行しているプログラムの因果関係が把握できなかったため、制御プログラムの修正や評価を繰り返しながら、最適な制御プログラムにチューニングする必要があったという。

こうした課題に対し、同社は今回、E2エミュレータに対し、マイコンとエミュレータ間の通信速度を高速化するとともに、フラッシュ書き換えとデータ通信の並列化により、制御プログラムのダウンロード速度を従来品(E1エミュレータ)比で、最大2倍に高速化したほか、CAN通信のデバッグ機能として、割り込み応答時間があらかじめ設定した時間を超えたことを検出してプログラムを停止させ、CAN通信の受信タイミングと割り込み応答処理を同時に記録・表示することで、CAN通信とプログラムの相関関係を明確にできる「CAN通信応答時間計測ソリューション」を提供することで、CAN通信とプログラム実行のトレース解析を、エミュレータのみで実現可能とした。

また、エミュレータからマイコンへ供給する制御系電源の電流量を測定する機能を搭載。消費電流のピーク検出や、電流値が指定のレベルを一定時間超えたことを検出してプログラムを停止させることが可能となったほか、プログラム動作と消費電流を対応させて表示することも可能となったため、電流を消費している制御プログラムを容易に把握することが可能となったという。

なお、E2エミュレータのボードインタフェースは、E1エミュレータと互換性を有しているほか、統合開発環境「CS+」に対応。また、Eclipseベースの統合開発環境「e2 studio」、Green Hills Software製統合開発環境「MULTI」およびIARシステムズ製統合開発環境「IAR Embedded Workbench」にも対応を予定している。今回の製品版では、RH850ファミリ向け基本機能に対応したものとなるとのことだが、今後、RH850ファミリ向けにボードインタフェース経由でのリアルタイムトレースおよび外部トリガ信号でプログラムを停止するソリューションの提供を予定しているとするほか、RXファミリおよびRL78ファミリへの対応も行っていく計画としている。

ルネサスのマイコン開発環境「E2エミュレータ」