東北大学は2月7日、赤血球の分化誘導因子であるGATA1発現の脱抑制が赤血球分化を開始させる鍵となっていることを明らかにしたと発表した。
同成果は、東北大学大学院医学系研究科 于磊博士研究員、森口尚講師(研究当時、現東北医科薬科大学教授)、鈴木未来子講師、山本雅之教授らの研究グループによるもので、1月9日付けの米国科学誌「「Molecular and Cellular Biology」に掲載された。
赤血球は、すべての血球へ分化することができる造血幹細胞から分化する。GATA1は、赤血球の正常な分化に必要な転写因子であり、GATA1の発現が開始することが赤血球分化の引き金となっているが、GATA1の発現がどのような機構によって誘導されるのかは明らかになっていなかった。
今回、同研究グループは、造血幹細胞でのGata1遺伝子発現を抑制する機能をもつDNA上の遺伝子制御領域(サイレンサー領域)を、Gata1遺伝子上流領域に発見。同サイレンサー領域には、Gata1遺伝子座のメチル化DNAを維持するDNAメチル基転移酵素が結合することを明らかにした。
さらに、Gata1遺伝子座から同サイレンサー配列を欠失させると、造血幹細胞でのGata1遺伝子発現が著しく増加し、赤血球分化が強力に誘導されるとともに造血幹細胞の枯渇が生じた。同様の表現型は、造血幹細胞においてDNAメチル基転移酵素を欠失させることによっても確認されたという。これらの結果から、造血幹細胞においてDNA制御領域がメチル化されることで抑制されていたGata1遺伝子の発現が、そのメチル化が外れることによって誘導されることが赤血球分化開始の引き金となることが示されたといえる。
GATA1発現の異常は白血病の原因となることが知られており、同研究グループは、今回の成果について、赤血球分化の理解だけでなく白血病の治療法開発にも繋がることが期待されるとしている。
また、同研究グループは、今回の解析を行うにあたって、改変したGata1遺伝子制御領域の機能を利用し、造血幹細胞特異的にDNA組み換え酵素Creを発現するトランスジェニックマウスを樹立。同マウスは造血幹細胞における効率的な遺伝子組換えを可能にし、造血幹細胞および血球全般における遺伝子の機能解析に広く応用できるという。