「日本版DMO(Destination Marketing / Management Organization)」のくまもとDMCは2月7日、熊本県及び各地域への観光客増を目的とするマーケティング活動のため、「データサイエンス」を活用すると発表した。
『日本版DMOは、地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに地域への誇りと愛着を醸成する「観光地経営」の視点に立った観光地域づくりの舵取り役として、多様な関係者と協同しながら、明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略を策定するとともに、戦略を着実に実施するための調整機能を備えた法人』(観光庁のWebより引用)。
観光庁は2015年11月、日本版DMOの候補となりうる法人「日本版DMO候補法人」を登録する制度を創設している。
くまもとDMCは日本版DMOとして、熊本を「食」×「観光資産」=「旅」でマーケティングする会社で、昨年の12月に設立された。業務としては、ビッグデータを活用したデータサイエンスによる調査・分析・マーケティング、地域ブランドの企画・立案・実施、着地型旅行商品企画開発・販売、地域特産品企画開発・販売、インバウンド受入環境整備、マーケティングツール(映像、WEBサイト、リーフレット、アプリ、SNS)コ ンサルティング・企画・制作、地域ホテル・旅館向けデジタルマーケティング業務支援などを行う。
「データサイエンス」では、eBASE(商品詳細データ)、NAVITIME JAPAN(目的地検索データ)、Agoop(スマートフォンGPS データ)、カスタマー・コミュニケーションズ(POS データ)の4社からデータを購入し、これに諸外国の経済データベースを加えながらデータビークルが自社のデータ分析専用データ統合(変換)ソフト「Data Ferry」により「観光振興専用部分析データベース」を構築。そして、 くまもとDMCがデータ分析ソフト「Data Diver」を利用して、地方自治体や観光事業者等から調査・分析の受託やコンサルティングディングを請け負う。
なお、データ分析プラットフォームとしては、マイクロソフトのクラウドプラットフォームであるMicrosoft Azureを活用する。日本マイクロソフトでは、技術サポートも行うという。
日本マイクロソフト 執行役員 デベロッパー エバンジェリズム統括本部長 伊藤かつら氏は、「今回のくまもとDMCさんの取り組みはユニークで先進的なものだ。これは、クラウドを活用することで可能になっている」と、クラウドを利用するメリットを強調。
くまもとDMC 代表取締役社長 村田信一氏(元熊本県副知事)は同社の特徴について、「観光の新たな展開、質的な転換をしようと全国にDMC、DMOがつくられ、地域の観光のマーケティングやマネージメントの動きが始まっている。くまもとDMCの特徴は、自治体の出資は4%で、肥後銀行の主導で作られたため、民間色が強く、収益性が高いことや、ビッグデータを複数使い、それらをかけ合わせて課題、問題点を洗い出していくというマーケティングも特徴だ。今後はこのユニークな取り組みを全国に展開したい」と説明した。
また、くまもとDMC 取締役兼CMOの外山由惠氏は、「まずは熊本のやさいやくだものを世界に向けて紹介し、その後、実際に熊本にお越しいただいて、体感していただきたい。くまもとDMCは地域に伴走し、稼げる地域をしっかり育てていきたい」と決意を語った。
同社は民間企業として、コンサルティング等で収益をあげ、運営していくという。
データビークル 取締役で統計家の西内啓氏は、今回のデータ分析では、リサーチデザインを行う点が大きな違いだと説明した。
同氏によれば、従来はデータを個別に分析し、データを見える化しても、実際に何をしたらいいのかわからないという例が多かったが、リサーチデザインではゴールを明確にしているのが特徴で、そのためには、結果としてどういった項目がどうなればいいかを定義し(アウトカム)、これらの数字は何が要因になっているのかをデータで分析していくという。