デロイト トーマツ グループが2月2日に発表した調査結果によると、半数以上のCFO(財務担当役員)が、自社の経理業務で多くの部分をRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI(人工知能)に置き換えられると考えているが、RPAよりもAIやCI(Cognitive Intelligence、認知知能)への期待度が高いという。

RPAやAIが有効に導入できると思う部門

同調査は同グループが1月10日から20日にかけて、上場している日本企業を中心とする企業のCFOを対象にWebサイト及び調査票送付により実施したもので、有効回答数は45社。

経理業務の自動化に関して、AIとRPAそれぞれが業務のどの部分に適用可能か尋ねたところ、「ほとんどない」との回答はAIが9%、RPAが2%と、いずれも10%に満たなかった。

半数以上のCFOが「AIに置き換えられる業務がたくさんある」と回答しており、RPAについては「置き換えられる業務がたくさんある」との回答が40%に上ったことと合わせて、「間接業務のある程度の部分」及び「ごく簡単な標準定型業務」に導入可能という回答がそれぞれ1/3近くに上ったという。

現時点で、かなりの人数のCFOがこれら技術の実際の業務現場に対する適用の可能性に期待していることが伺えると同グループは見る。

RPAやAIに対する認識

RPAをAIとの対比においてどのように捉えているか聞くと、「RPAは有益な自動化ツールではあるが、大きな恩恵は後の認知知能(CI、Cognitive Intelligence)またはAIによってもたらされる」との回答が46%と最多だった。

また、16%のCFOが「純粋なITの一種に過ぎない」と回答している。

選択肢にある「デジタル人材」は人に代わりうる可能性を指しているといい、「RPAもAIもデジタル人材の導入になりえる」が38%と、回答の多さから期待が高いことが伺えるという。

一方、「AIやRPAを使いこなせる人材の育成が課題」との指摘もあったとのことだ。

RPAが自社の業務部門に効果・恩恵をもたらすと思う分野(2つまでの複数回答)

RPAの効果が何をもたらすかを複数回答で尋ねると、「それほど恩恵をもたらすものではない」との回答は8%に過ぎず、多様な形での有効活用を期待しているという。特に、品質の向上や精度の向上を期待するという定性面への効果を挙げる回答が目立ったとしている。

実際の導入現場では、当初は「ロボットは24時間稼働する」といった定量面での効果をアピールする場合が多いというが、利用が拡大するにつれ、「間違いの無いきちんとした業務を遂行する」という業務品質の向上への効果が認められることからも、上記の結果が裏付けられるという。

最も回答の多かった「業務容量拡大・縮小の柔軟な対応」(23%)では「長時間労働の解消に役立つ」というコメントもあり、産業界の課題である働き方の問題にも一石を投じる可能性が伺えるとしている。

実際の導入予定については「現時点は未定」が61%と最多だが、半ば予想していた結果だという。一方、「近年中に試験導入を検討中」との回答が20%あり、企業現場への急速な浸透が伺えるとのこと。

否定的な回答では、「効果が期待できない」が5%、「効果はありそうだが、他の取り組みを優先させる」が14%であり、効果が無さそうだとする回答は5%にとどまった。 コメントとしては、「経理部門のみへの導入では効果は限定的」という積極的な指摘や、「導入の前提になる、業務の標準化の取り組みがまだまだ」という慎重な意見があったとのことだ。

過去に同様に実施したデロイトの海外でのサーベイでは、2015年に13%だった「近年中に導入を検討」との回答が2016年で76%と大きく伸びたといい、今後の変化に注目すべき数字だと同グループは見る。

RPAでどの程度の業務が自動化できるかという点については、「マンパワーの20~30%」との回答が51%で最多であり、「マンパワーの40~50%」は28%、「マンパワーの10%未満」は21%だった。

2017年に注目するリスク/イベント(3つまでの複数回答)