IDC Japanは2月1日、国内金融IT市場(銀行、保険、証券/その他金融の国内におけるIT支出、ATM、営業店端末のIT支出分も含む)の2016年~2020年の市場予測を発表した。
2017年の国内金融IT市場は、国内経済は堅調に推移しているが、前年の大型案件の反動もあり、市場規模は2兆517億円、前年比成長率は1.1%を予測している。業態別にみると、メガバンク(前年比成長率:2.2%)、カード(同:2.7%)、ネット証券会社(同:2.5%)では比較的高い成長率で拡大すると想定している。
国内金融機関では、既存サービス強化、または新しいビジネスモデル構築のため、「FinTech」(ITを活用した新しい金融関連サービス)を採用する金融機関が増加している。現時点では、検証段階にとどまっている金融機関が多いものの、一部ではスタートアップ企業などと連携して「FinTech」関連サービスを提供するケースも増えており、2017年以降本格的に増加が見込まれるという。
同社では「個人資産管理」「金融情報/投資支援」「テレマティクス保険など」「会計/経営情報」「ソーシャルレンディング/トランザクションレンディング/クラウドファンディング」「決済」「暗号通貨」「ブロックチェーン」の8つのサービス分野において、サービスを提供・活用するためにスタートアップ企業など外部企業と連携、または自社でシステム開発・運用するためのIT支出額をFinTech関連IT支出規模として推計。
この結果、国内金融機関におけるFinTech関連のIT支出規模は、2017年に110億円、2020年には338億円に拡大すると予測している。特に広範囲のシステムでの活用が見込まれる「ブロックチェーン」、企業への柔軟な資金提供を可能にする「ソーシャルレンディング/トランザクションレンディング/クラウドファンディング」のIT支出が拡大するとみている。
2017年以降、FinTechソリューションの提供に本格的に取り組む金融機関が増加し、金融機関とスタートアップ企業との連携もより緊密になるとみている。ただし、金融機関においては、スタートアップ企業との間のセキュリティ面などの懸念が依然として、システム連携、データ連携の阻害要因となっている。
同社のITスペンディンググループ リサーチマネージャーである市村仁氏は「ITベンダーは、セキュリティ対策のほか、顧客データ管理/分析といった分野を中心にして、金融機関の『FinTech』ソリューションの提供本格化に向けてのサポートを強化することが重要となる」と分析している。