日本の南岸を西から東に流れる黒潮が、冬に大雨や大雪をもたらす「爆弾低気圧」を日本付近に集中させていることを、海洋研究開発機構(JAMSTEC)と北海道大学の研究グループがスーパーコンピューターによる解析で明らかにした。研究成果はこのほど米国の気候専門誌に掲載された。
JAMSTECの吉田聡(よしだ あきら)研究員と北海道大学大学院理学研究院の見延庄士郎(みのべ しょうしろう)教授らの研究グループは、JAMSTECのスーパーコンピューター「地球シュミレーター」を活用し、地球の大気の変動を黒潮がある場合とない場合に分けて解析した。解析作業では、人工衛星による1981年から20年間の1日ごとの海面水温データなどが入力された。
その結果、黒潮がある場合は、低気圧が暖流の黒潮上を通過すると大量の水蒸気を取り込んで爆弾低気圧が発達し、爆弾低気圧が日本付近に集中することが分かった。またこの爆弾低気圧の集中が黒潮下流の北東太平洋上で強い偏西風の流れ(「ジェット気流」)を南北に蛇行させ、そのことが北米西岸とハワイ諸島付近の降水量に影響することなども判明したという。
今回の解析結果について研究グループは、黒潮が熱帯から中緯度に運んだ熱エネルギーが「爆弾低気圧の発達」という要因を介して北太平洋上の大気循環と降水分布を決めている一連のメカニズムが初めて提示された、としている。
地球シミュレーターは2002年3月からJAMSTECが運用しているスーパーコンピューターで、現在は第3世代。2015年6月に運用開始し、大規模データの解析により環境問題や地殻変動、地震発生機構の解明や津波被害予測研究に貢献している。
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