神戸大学などは1月13日、光合成でCO2から糖を合成する生物機能の進化的な原型を、光合成を行わない原始的な微生物に発見したと発表した。
同成果は、神戸大学の蘆田弘樹 准教授(奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 元助教)、河野 卓成 学術研究員(奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 博士後期課程単位取得退学、今回の研究成果を元に現在、博士号を申請中)、立命館大学の松村浩由 教授、奈良先端科学技術大学院大学、ビルラ理工大学(インド)、大阪大学、静岡大学などの研究グループによるもの。詳細は英国のオンライン総合科学誌「Nature Communications」に掲載された。
光合成のシステムがどうやって誕生し、確立してきたのかについては、まだ良く分かってないことが多く、研究グループでもこれまでの研究から、光合成を行わない納豆菌などの枯草菌がほとんどの光合成生物でCO2固定を行っている酵素「ルビスコ(RuBisCO)」の遺伝子とよく似た遺伝子を持つものの、CO2固定を行わず、関係のない代謝経路中で働いていることなどを報告してきた。
今回、研究グループは、さらに研究進めることで、光合成が誕生するよりも前に出現したと考えられているメタン生成菌が、光合成で働く遺伝子とよく似た遺伝子を持っていることを発見。これらのメタン生成菌の遺伝子から合成した酵素は取り込んだCO2から糖を合成するための代謝経路「カルビン回路」で機能できる性質があることなどを確認し、メタン生成菌で発見したカルビン回路様CO2固定経路は、光合成カルビン回路の進化的原型となったものであることが示されたとする。
今回の成果は、これまで不明であった生物進化の過程でどのように光合成システムが完成していったのかの解明につながることが期待されると研究グループでは説明しているほか、今後の研究で、40億年間の遺伝子進化の機構が解明され、地球生物全体の進化機構、ひいては現在の生物の生存戦略の本質が見えてくることが期待されるとしている。