半導体市場調査企業である米IC Insightsは1月12日(米国時間)、2016年の専業ファウンドリ売上高ランキング・トップ10を発表した。それによると、2016年のファウンドリ全体の成長率は11%の2ケタ成長を遂げ、中には50%超や30%超と急成長した企業も3社あったという。
2016年の専業ファウンドリ市場は、いわゆる"ビッグ4"(1位の台湾TSMC、2位の米GLOBALFOUNDRIES(GF)、3位の台湾UMC、4位の中国SMIC)だけで全体の85%のシェアを占めている。中でもトップのTSMCだけで、59%のシェアを占めており、独走態勢を築いている。同社の2016年における成長率は11%で、前年比で売り上げは29億ドル増えたこととなる。2位のGF、3位のUMC、4位SMICの3社の売上高を合わせたシェアは26%で2014年とほぼ変わらない。
前年比54%の成長を遂げたX-Fab
トップ10の中で、最も成長率が大きかったのはアナログ/ミクスドシグナル、高耐圧パワーデバイス専業ファウンドリのX-Fabであり、その成長率は54%となった。同社は2016年秋に、フランスのファブレスAltis Semiconductorを買収して売り上げを伸ばすことで、初めてトップ10入りを果たした。ちなみに同社の源流をたどると日立製作所の欧州半導体工場に行きつく。それが、後にルネサス テクノロジーに移管され、さらにはルネサスのリストラで、同社の従業員(ドイツ人経営幹部)に売却された。また、中国最大の半導体メーカーであるSMICが2016年X-Fab株式の7割を獲得し、車載半導体に参入を果たした。そのSMICも2016年の成長率は31%となっており、中国の国策にそって猛攻を始めている。
日本でパナソニックと合弁ファウンドリを展開しているイスラエル本拠のTowerJazzも30%の成長率を達成している。アナログ/ミクスドシグナルに特化したスぺシャリティ・ファウンドリである同社は、毎年2桁成長を続け、5位の台湾Powerchipとの差を毎年縮めてきており、2016年にはほとんど追い付いた状態で、2017年は追い越す勢いである。また、ファウンドリ・トップ10社のうち、8社がアジアを本拠とする企業である点も注目され、アジアが半導体製造拠点と言われる所以である。
IDMのファブレス化で強まるファウンドリへの依存
ファウンドリには2種類の顧客がいる。例えばQualcomm、NVIDIA、Xilinx、AMDなどのファブレスと、ON SemiconductorやSTMicroelectronics、東芝、ルネサス エレクトロニクスなどの垂直統合型半導体メーカー(IDM)である。ファブレス企業自体の成功に加えて、既存のIDMがますます外部委託を増やしているため、ファウンドリは1998年以降大きな成長を続けてきた。それに加えて、ますます多くの中堅半導体メーカーが、老朽化したファブの閉鎖や売却を行い、ファブレスビジネスモデルへ移行している。例えば富士通、パナソニック、AMD、IDT、Maxim Integrated、LSI(Avago Technologiesを経て、現在はBroadcomに吸収)などだ。このため、いまや、ファウンドリの売上高の成長率は半導体産業全体の成長率よりはるかに高くなっている。
なお、IC Insightsは、専業ファウンドリ市場が今後5年間にわたり、世界半導体IC市場の中でますます重要な役割を担うようになると見ており、2016~2021年に年平均成長率7.6%で拡大し、500億ドル規模の2016年から2021年には721億ドルへと拡大すると予測している。