「攻殻機動隊」のタチコマと現実世界で"出会う"――アニメ作品のプロモーションではなく、経産省の「ロボット導入実証事業」として、こんな試みが行われようとしている。
東京都・渋谷マルイの「I.Gストア」で行われるのは、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズで人気の「タチコマ」を用いた、非製造業分野でのロボットの社会実装を見込んだ接客サービスの実証実験だ。
実証実験の開始はあす23日からの予定だったが、諸般の事情のため一時延期となってしまった。しかし1/2スケールのタチコマ自体の展示は実施予定で、発話と腕の動作は稼働するほか、記念撮影は自由に行える。
画面の向こうのタチコマが現実と「同期」
この実証実験では、来店客が自身のスマートフォンに専用アプリをダウンロードし、アプリ内でタチコマを「育成」することを前提としている。
来店客が店舗内のテーブルにiPhoneを置くとビーコンをセンサが検知し、店頭の1/2スケールのタチコマと、アプリ内の"バーチャル"なタチコマが同期。例えば、生意気な性格に育ったタチコマを同期すると、性格を反映したセリフを話すなど、ユーザーそれぞれが育てたタチコマが店頭で物理の体を得て、予約した商品を持ってきてくれる。
専用アプリ(iOS対応、リリース済み)では、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」劇中の記憶を利用者のスマホ上のタチコマに取り戻すというシナリオで、テキストや音声で言葉を投げかけてタチコマのメモリを「解析」する |
後日開始予定となった取り置きサービスの画面。当初は詰め合わせセット1点からの開始を予定しているとのことだった |
karakuri products 代表のロボット研究者・松村礼央氏は、実証実験の狙いについて「ロボットのためのインフラの整備」とコメント。例えば、自動車は買ってすぐに運転して帰途につくことができるが、それは道路などのインフラや、乗るユーザーのリテラシーなどの条件がそろっているためと指摘。翻って、ロボットにはそういったインフラが整っておらず整備が必要だが、収益が伴う仕組みを確立できなければ継続的な投資は難しい。
それゆえに、「ロボットのためのインフラを維持したい」と思える動機付けが重要であり、それが長年築き上げられてきた攻殻機動隊のストーリー性によって可能になるのでは、と語った。
karakuri products 代表 松村礼央氏(左)、プロダクション・アイジー 執行役員 郡司幹雄氏(右)。郡司氏は、これまでタチコマの「ガワ」の監修をしてきたが、「動く状態」での展示がこれが初となることから期待しているとコメントした |
今後開始される実証実験では、タチコマから直接手渡すのではなく、台座を介した商品の運搬が想定されている。その理由はやはり、安全性のため。しかし、今後やれることは増やしていきたい、と語っていた。
実証実験の再開予定は、今後I.GストアのWebサイトなどで告知予定。育成した自分だけのタチコマとの対面は先送りとなってしまったが、実物を見てみることは可能なので、興味を持った人は足を運んでみては。