市場動向調査企業である台湾TrendForceは、2017年の年間DRAMビット供給量は、2016年比で2割しか増加せず、これに対して需要の衰えは見られないことから、年間を通じてDRAMの供給不足が生じ、価格の上昇が続くとの見方を示した。
DRAMは、韓国Samsung Electronics、韓国SK Hynix、米国Micron Technologyの3社で98%のシェアを占める寡占状態にあるが、これらの企業は同時に、DRAM以上に需要が急上昇しているNAND型フラッシュメモリーメーカーでもあり、今後は3D NAND増産に注力する模様で、DRAMのビット供給量の増加は、20nmクラスのプロセスから1Ynm(10nm台)への移行による収率向上によるものといえる。
「しかし、10nm台への微細化は困難を極めており、その結果、ビット生産量は前年比20%も増えず、歴史的に低いものとなる可能性が高い。また、主要サプライヤは、近い将来、能力を拡大する予定はなさそうで、それぞれの最先端技術の開発も減速している。したがって、DRAM供給不足の状況は2017年を通して続くだろう」とTrendForceの調査ディレクターAvril Wu氏は説明している。
#中国のDRAM参入に大きな障壁
中国は、NANDとともにDRAMのサプライチェーンを国内に整備する方向性を打ち出しているが、中国からみると、DRAM市場は、他の半導体製品に比べて参入障壁が著しく高い。Sansung、SK Hynix、Micronの3社寡占で、供給量を抑制して利益を確保する方針のため、中国勢の参入を阻止しようと神経をとがらせているほか、いずれも中国勢に製造技術が漏えいしないよう警戒しているためだ。現在の習近平 国家主席が卒業した中国の名門大・清華大学傘下の国有ハイテク企業グループ紫光集団が、2015年7月にMicronを230億ドルで買収する提案を行ったが国家安全保全上の理由で米国政府が介入し頓挫した。中国勢は、買収は諦めたものの、有償技術供与をもちかけているとのうわさが絶えないが、トランプ次期大統領の政権下では、さらにハードルは高まる見通しだ。なお、中国勢は、武漢に巨大メモリファブを建設する計画を発表しているが、先端メモリプロセスの製造技術の入手にめどが立たず、計画を具体化できずに越年しそうである。