NECは、ヘルスケア事業強化の一環として、NECが発見したがん治療用ペプチドワクチンの開発・実用化を推進する新会社「サイトリミック株式会社」を設立し、創薬事業に参入すると発表した。
ペプチドは、アミノ酸が数個~10数個つながった物質で、ペプチドワクチンは9個程度のアミノ酸からなり、これを皮下注射すると、体内のがん細胞を攻撃する免疫を活性化するという。ただ、ペプチドは白血球型(HLA型)ごとに、結合するペプチドを探さなければならず、これまでは、予測と実験を繰り返し、膨大な時間を要していたという。
そこでNECは、AIを活用することで、実験をしなくてもパターンの結合を予測するシステム(免疫機能予測システム)を開発。約200の実験で、約5000億とおりの組み合わせの93%を予測することに成功した。
そして、2014年からの山口大学・高知大学との共同研究および山口大学における臨床研究を通じて、日本人の約85%、欧米人の約60%をカバーする異なる3つの白血球型(HLA型)で免疫の活性化が確認されたペプチド(HSP70ペプチド、GPC3ペプチド)を発見(特許出願済み)。
また、NECは2015年4月にペプチドワクチンの効果を活性化するアジュバンド(免疫賦活剤)を山口大学と共同で発見した(特許出願済み)。
そして、2016年1月からは上記ペプチドとアジュバントを用いて、新たな「複合免疫療法」の臨床研究を行うとともに、初期の安全性・有効性を山口大学で実証。
今後は新会社のサイトリミックにおいて、これらペプチドとペを組み合わせたワクチンについて、治験用製剤の開発、非臨床・臨床試験、製薬会社との事業化検討などを行い、新たながん治療薬としての実用化を進めるという。
NEC 取締役 執行役員常務 兼 CMO 清水隆明氏は、創薬に取り組む背景について「今回の取り組みはアクティブラーニングの技術を使い 薬を早く発見するものだ。これまでのがん治療は抗がん剤、手術、放射線の3つが基本で、患者の体に負担をかけるものであった。そこで期待されるのがペクチドワクチンの分野で、NECはこれまで長く研究している。AIと創薬は非常に相性がよく、この事業に参入することにした」と語った。
サイトリミックは東京都品川区の本社を置き、NECでバイオIT事業開発を統括していた土井俊氏が社長を務める。現在、従業員は5名程度だが、今後、専門家の採用を進める。
資本金は3億6150万円で出資比率はNECが39.9%、その他が60.1%で、この中にはファストトラックイニシアティブ、SMBCベンチャーキャピタル、、NECキャピタルソリューション)による第三者割当増資が含まれる。
新会社ではワクチンの製造販売自体を行うことは考えておらず、将来は株式公開や譲渡などを検討していくという。