2016年のノーベル賞授賞式と晩さん会がスウェーデン時間10日(日本時間11日)、スウェーデン・ストックホルム市内で行われた。授賞式では医学生理学賞の大隅良典(おおすみ よしのり)東京工業大栄誉教授(71)がメダルと賞状を受け取った。式の後の晩さん会で大隅さんは「素晴らしい機会をありがとう」などとスピーチした。授賞式に先立って現地時間の7日に行われた記念講演では「常に好奇心に駆られて研究してきた」などと語っている。大隅さんが拍手と喜びに包まれた「ノーベル週間」が終わった。

写真1 ストックホルム市内のコンサートホールで現地時間10日行われた2016年のノーベル賞授賞式 (ノーベル財団提供)

授賞式はストックホルム市内のコンサートホールで開かれた。華やかなファンファーレが鳴り響き、妻の萬里子(まりこ)さんや研究仲間らが見守る中、医学生理学賞のメダルと賞状がスウェーデンのカール16世グスタフ国王から授与された。授賞理由は、細胞がタンパク質を再利用するオートファジーの仕組み解明。大隅さんはこの日研究者として最高の栄誉に輝いた。

授賞式の後、ストックホルムの市庁舎「青の広間」で開かれた晩さん会に出席、「酵母からのたくさんの学びと素晴らしい贈り物に感謝している。その贈り物でも一番好きなのは日本酒と蒸留酒です」とユーモアを交えてスピーチし、最後に「すばらしい機会をありがとう」と結んだ。

授賞式に先立って大隅さんはスウェーデン時間の7日に 記念講演をした。大隅さんは1時間近い講演の初めに、食料事情が悪い時代に生まれて病弱だった子どものころに魚や昆虫採集に夢中になっていたことなどを披露。研究者になって生命の基本はタンパク質の合成にあると考えたことなどを紹介した。そして「競争は得意でなかったが、顕微鏡をのぞいていた時間はどの研究者より長かった」と語り、オートファジーの基本的な仕組みや研究の経緯について多くの後輩研究者の名前を挙げながらスライドを映して分かりやすく説明した。

この中で大隅さんは、「オートファジーの研究は好奇心によって進んだ。研究を始めたころはオートファジーがその後感染症やがんと関係していることが明らかになるとは思わなかった。今は生物学の一大分野になった。世界の研究者のおかげだ」などと強調した。

講演の最後に「社会は科学を文化活動の中核として育ててほしい。ノーベル財団が基礎研究の成果を取り上げてくれて嬉しい」と述べ「素晴らしい同僚や友人、家族、特に、妻の萬里子に感謝したい」と感謝の言葉を述べた。

日本人のノーベル賞受賞は3年連続。日本人受賞者は、15年に同じ医学生理学賞を受賞した大村智(おおむら さとし)さん、物理学賞を受賞した梶田隆章(かじた たかあき)さんに続いて計25人になった。

写真2 授賞式でスウェーデンのカール16世グスタフ国王からメダルを受け取る大隅良典さん(ノーベル財団提供)

写真3 ストックホルム市庁舎で同10日行われたノーベル賞晩さん会(ノーベル財団提供)

写真4 記念講演する大隅良典さん(東京工業大学提供)

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