立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所(以下、白川研)は、漢字を現代の書体(楷書)から古い書体(甲骨文・金文・篆文)(以下、古代文字)に変換し、自由に使用できる「白川フォント」の検索システムを開発した。

「京」の字体の変遷

「立命館大学」で漢字列検索した際の表示(一部)

同検索システムは、故・白川静名誉教授(以下、白川静博士)の没後10年記念事業のひとつとして行われたもの。12月12日の「漢字の日」を前に、そのVer.1がインターネット上で無料公開され、常用・人名用漢字の古代文字約4400字が検索可能となった。

今回の「白川フォント」の公開により、現代の文字(文字数に制限なし)を一度に古代文字に変換できるようになり、これまでコンピュータ上での利用が困難であった甲骨・金文などの文字を、一般的な文書作成ソフトで簡単に利用することが可能となった。POPやアートとしても使用できるようになるほか、名刺に活用するなど、古代文字をより身近なものに、また白川文字学に関わる研究や教育現場での教材作成など漢字教育にも広く活用されることが期待されているということだ。

また、古代文字は、複数の現代の漢字を一発検索し、異なる書体の古代文字に同時変換する「漢字列での検索」と、古代文字の字体の変遷が一目でわかる「一文字検索」2方式の検索が可能となっている。常用漢字は2136字種2136字体、人名用漢字は632字種650字体の中で古代文字が判明している漢字を対象として収録しており、古代文字の全収録数は4391字(甲骨681、金文1084、篆文2593、古文30、籀文3)となっている。甲骨・金文・篆文の中には複数収録した文字もあり、その場合は「甲骨 2」・「金文 2」・「篆文2」と表示される。

同研究所は、白川静博士の築かれた「白川文字学」の成果を社会に還元していくために数年来、体験型漢字学習講座「漢字探検隊」の開催(全国で約160回)や小・中・高での「出前授業」、一般向けの「漢字教室」などに取り組んでいる。今回の「白川フォント」に関しては、教育現場などで活用するために、博士が「漢字類編」(木耳社)、「字通」、「常用字解」(株式会社平凡社)などに収録した古代文字をもとに、同学情報理工学部ディジタル図書館研究室と共同でフォント化が行われた。なお、今回公開する Ver.1は暫定版であり、今後収録文字数や書体の拡充等を行っていくということだ。