日中のインフルエンサー・マーケティングのキーマンが参集し、ネットインフルエンサー「網紅(ワンホン)」の活用をテーマに講演やディスカッションを行ったイベント「Internet Celebrity Summit 2016」。第2部では、日中の人気インフルエンサーらがトークセッションやデモンストレーションを行い、人気動画の作り方などを語りました。
インフルエンサー・マーケティングにアニメや漫画を活用する方法とは? Weibo Comicの呂延斌CEOが解説
第2部の冒頭、「Internet Celebrity Summit 2016」のスポンサーであるWeibo Comic社の呂延斌CEOが登壇し、中国市場でのインフルエンサー・マーケティングにアニメやコミックを活用する方法について解説しました。
Weibo Comic社は、アニメやコミック、ゲームの配信事業などを手掛けるサービスプロバイダー。「Weibo」のアカウントを日本の出版社や作家などに発行し、中国で事業展開するための支援も行っています。
呂延斌CEOは、アニメコンテンツを活用したインフルエンサー・マーケティングの具体例として、中国で人気のアニメキャラクターのアカウントを「Weibo」で作り、アニメキャラクターを「ワンホン」に見立てマーケティングに生かせることなどを説明しました。
また、Weibo Comic社の今後の事業戦略として、中国の漫画を日本に販売するほか、「日本の制作会社などと連携し、中国向けのコンテンツの開発に取り組みたい」と意欲を示しました。同時に、日本の漫画家やアニメ制作会社などを投資対象としたファンド「Weibo IP Fund」の設立を発表しました。
「Weibo」で人気のイラストレーターらがパフォーマンス 世界的ヒューマンビートボクサーも登場
続いて、中国で人気のイラストレーターが登壇し、微博の王高飛CEOやIMSの李檬CEO、アライドアーキテクツ代表の中村氏らの似顔絵を即興で描くパフォーマンスを披露。6人の似顔絵を、わずか5分で描き終えると、会場から大きな拍手が起きました。
続いて、楽器を使わず、口からさまざまな音色やリズムを奏でる「ヒューマンビートボックス」のパフォーマー、Daichiさんも登場。世界トップレベルのボイスパーカッションを披露し、会場を沸かせました。
Daichiさんは最近「Weibo」のアカウントを作り、動画や写真をアップしているとのこと。「音楽やパフォーマンスは全世界共通。『Weibo』を通じて中国に伝えたい」と話し、中国への情報発信に意欲を示しました。
インフルエンサーが語る人気動画のコツ ライブ配信のデモンストレーションも
イベントの終盤が近づき、いよいよ目玉企画の一つである、日中の人気インフルエンサーによるデモンストレーションがスタート。中国で数百万人のフォロワーを持つ「ワンホン」や、日本で人気のYouTuber(ユーチューバー)らが、人気動画を作るコツなどについて語りました。
ステージから中国にライブ配信
最初に登壇したのは中国で絶大な人気を誇る「ワンホン」の楊莉莉Babyさんと娯楽姫八卦さん。2人は中国のライブ配信アプリを使い、ステージ上の様子を中国に配信しながら、ライブ配信でフォロワーとコミュニケーションを取る仕組みなどを解説しました。
娯楽姫八卦さんは、イベント中に視聴者から次々とコメントが投稿されていくようすを紹介し、画面上にハートマークが現れると、「視聴者から人気が集まっていることを表している」(娯楽姫八卦さん)と説明しました。
楊莉莉Babyさんは、ライブ配信によって仮想通貨の収入を得られることや、プラットフォーム上で視聴者からプレゼントを受け取り、そのプレゼントを換金できる仕組みがあることも説明。人気の「ワンホン」は視聴者からのプレゼントだけで高額収入を得るそうです。
ファンはあらかじめ購入したポイント(仮想通貨)を使ってプレゼントを選び、配信主に贈ります。イベント中も2人に次々とプレゼントが贈られていました。
楊莉莉Babyさんと娯楽姫八卦さんによる約10分間の生配信は、「ワンホン」とユーザーの距離の近さや、「ワンホン」のユーザーへの影響力の高さをあらためて実感させられるものでした。
日中で人気の「ゲーム実況」とは
続いて、ゲームをプレーしながらライブ配信を行う「ゲーム実況」で有名な3人が、人気動画のポイントをテーマにパネルディスカッションを実施しました。
YouTubeのチャンネル登録数20万人以上を誇り、さまざまなゲーム実況で人気の茸さん(左)。YouTubeのチャンネル登録数5万6000人、モデルとしても活躍中の、まみちゃんねるさん(中央)。Weiboのフォロワー数51万人、コスプレでゲーム実況を行う中国の小孽小囍さん(右)。 |
動画を配信する際の心構えについて、まみちゃんねるさんは、「喜怒哀楽をしっかり表現して、視聴者が私と一緒にゲームをしているような感覚を持ってもらうように心がけている」と説明。小孽小囍さんは、「ゲームのプレー方法をユーザーから教えてもらいながら配信することもある」と話し、視聴者との双方向性を重視していると説明しました。2人の意見に対し、茸さんも「ユーザーとのやり取りが大切であることは日本でも同じ」と同調しました。
また、「日本のゲーム実況動画は中国でも人気が出ると思うか」との質問に小孽小囍さんは、「日本のゲームは中国でも人気が高いため、中国のトレンドに合わせれば中国でも人気が出ると思う。配信主は元気があった方が、中国では人気が出やすい。話し方は個性を生せば中国でも通用すると思う」と答えました。
トークセッションの最後、まみちゃんねるさんは、「日本と中国のゲーム実況は似ているので、中国語を勉強して配信に挑戦してみたい」と意欲を示すなど、ゲーム実況のグローバル展開の可能性も示唆するパネルディスカッションとなりました。
人気のライフスタイル動画のポイントとは
日中のインフルエンサーによるトークセッションの3本目のテーマは「ライフスタイル」。リアルな日常生活を紹介する動画が人気を集めているカナダ出身、福岡在住のブレスウェート・ミカエラさんと、コミカルなグルメレポートやクッキング動画などで多数のフォロワーを集めている中国の沙茶醬さんが登壇。進行役は、中国語のライフスタイル動画を得意とする樋口亜希さんが務めました。
ブレスウェート・ミカエラさんは、ライフスタイル動画の撮影のポイントについて、「街や周囲の雰囲気が伝わるように、自分の顔だけでなく、色々なものを撮影している。何度も何度も撮影し、数時間の映像を3~5分に編集する」と説明。数時間の映像の大半をカットすると聞いた樋口さんは、「もったいないが、だからこそ良い動画になる」と感想を述べました。
樋口さんは沙茶醬さんに対して、「ブレスウェート・ミカエラさんが中国でライフスタイル動画を配信するとしたら、どのような内容が良いか」と質問。沙茶醬さんは、「中国の料理を外国人が食べたときに、どのようなリアクションをとるかということは、中国人も知りたいと思う」と話し、ブレスウェート・ミカエラさんの動画は中国でも人気になる可能性があるとの私見を述べました。
中国ネットインフルエンサーの実力をランキング化 TopKlout社の張宇彤・総経理が登壇
イベントの最後のテーマは、企業が「ワンホン」を選ぶ方法について。WeiboやIMSらが共同出資して2014年に設立したTopKlout社の張宇彤・総経理が登壇し、「ワンホン」の影響力を数値化したランキングについて説明しました。
TopKlout社が作成しているランキングは、「Weibo」「Baidu」「WeChat」など6つのプラットフォームからデータを収集し、「ワンホン」の拡散力やブランド力、ソーシャル影響力などを独自に指数化して順位をつけたもの。「Eコマース」「ゲーム」「アニメ」「ファッション」「お笑い」の5つのカテゴリーでランキングを作成しています。
張宇彤・総経理は、中国を拠点に活動する卓球プレーヤー、福原愛さんが上位にランクインしていることにも触れ、「海外のネットタレントの中でも、日本のネットタレントはとても輝いています」と紹介。日本人インフルエンサーが中国で活躍する可能性も示唆しました。
ワンホンを発掘・育成する新会社「Vstar Japan」発足 アライドアーキテクツとIMSが共同出資
イベントの閉幕式でアライドアーキテクツの中村壮秀社長は、動画インフルエンサーの発掘や育成をIMS社と共同で行っている「Vstarプロジェクト」に言及した上で、「Vstarプロジェクト」を日本で展開するための事業会社としてVstar Japan(ヴイスタージャパン)株式会社を設立したと発表しました。
今後は、中国人インフルエンサーを日本の企業に紹介するほか、日本人インフルエンサーの発掘や育成を行うことで、日本企業の中国におけるインフルエンサー・マーケティングを支援すると強調し、イベントを締めくくりました。
今回の「Internet celebrity Summit 2016」を通じて、「ワンホン」の中国市場における影響力があらためて示されました。SNS上のクチコミが消費者に与える影響が急速に強まる中、中国ECに取り組む事業者にとって、マーケティング媒体としての「ワンホン」の重要性は、ますます高まっていきそうです。
取材・執筆:渡部 和章
ライトプロ株式会社
本稿は、ソーシャルメディアマーケティングラボにて掲載された記事を転載したものです。