ものづくり産業、特に日本に拠点を有し、グローバルで戦おうとすれば、生産性を高め、競争優位性を確保する必要がある。しかし、得てしてそういった取り組みは、現場単位であったり、良くて事業部単位であったり、と全体で共有するためにはさまざまな壁が立ちはだかり、うまく行かないことも多い。

そうした状況を鑑み、OKIでは、2011年より年に1回、全世界の生産拠点より、生産性の向上につながる取り組みを募集し、優秀な取り組みを決定する「生産改革大賞 発表会」を実施してきた。今年も、2016年12月6日に第6回目となる発表会を実施。全世界36拠点から選ばれた8つの取り組みが紹介された。

OKIが自社の生産拠点の取り組みを対象に開催した「第6回 生産改革大賞 発表会」の様子。会場には普段は生産現場には足を踏み入れない営業関連の従業員含め、100名ほどが訪れ、各拠点からの発表を聞いていた

こうした取り組みを行ってきた意図を、同社執行役員で技術責任者/品質責任者 情報・技術本部 副本部長(兼)エンジニアリングサポートセンター長である横田潔氏は、「大きく3つの目的がある。1つ目はグループ全体で情報を共有する場を提供すること、2つ目は、事業部ごとに分かれている生産拠点間の交流を促進すること、そして3つ目が、取り組んでいる現場の人たちのモチベーションアップにつなげる」と説明する。

同発表会への出場方法は、各事業部門からの推薦方式。発表会では、OKIの常務以上の役員ならびに複数の工場長が審査員として、それぞれの取り組みを評価。最優秀チームには賞金100万円が授与されるほか、すべての発表は録画され、会場に参加できなかった生産拠点メンバーなどに展開される。

OKI常務執行役員で情報責任者 情報・技術本部長を務める猪崎哲也氏

また、同社常務執行役員 情報責任者 情報・技術本部長を務める猪崎哲也氏は、「近年、研究部門と連携することで、IoTを活用した生産性向上に向けた取り組みが出てきた」とする一方で、「生産設備の稼働率の向上に向けた地道な取り組みも継続して行われている」ともしており、今後、この2つの方向性の取り組みが相乗効果をもたらし、それぞれの生産拠点の生産性を高めていくことが期待できるとコメントするほか、「こうした取り組みを継続していくことで、これからのIoT時代における、人とデジタルが融合したOKIらしいものづくりの基盤が生み出され、それがOKIの工場の在り方として広まっていってもらえれば」、と今後も継続して取り組みを行っていくことを強調した。

第6回目となる今回は、新たに「『みえる・つながる・いきる』工場に向けて」というサブテーマを提示。最優秀賞は、メカトロシステム事業本部 メカトロシステム工場が取り組んでいる多品種少量生産の生産性向上を支援するためのシステム「プロジェクション・アッセンブリー・システム(PAS)」が受賞した。

「プロジェクション・アッセンブリー・システム(PAS)」の実物。上部にプロジェクタを配置し、ミラーで作業台および棚に指示などを映し出す

PASは、市販のプロジェクタとUSBカメラを組み合わせることで、次にどの部品を部品を納めた棚からピックアップすれば良いか、といったことを作業者に提示するシステム。

作業台には、作業指示のほか、熟練者の動画など、さまざまな情報を表示することができるという。また、2台のUSBカメラを活用することで、深さ方向を検知。これにより、棚のどこに手を入れたのか、といったことを手軽に検知することを可能とした。ちなみに電動ドライバにはトルクを検知するセンサが搭載されており、最適なネジ締めを実現。緩みを防ぐことが誰でもできるような工夫も施されているという

ライン切り替えを容易に実現することを目指し、表裏で別のパーツを収納した棚にしたり、オプションとして、Kinectを活用した棚外の動きの軌跡を調査する、といったことも可能で、無駄な動きの可視化や熟練作業者との行動比較などを行うことも可能としたという。

左のモニタの後ろに見えるカメラがオプションとして用意したKinect。これにより、作業棚の外における作業者の動きも検知することを可能とした

なお、PASはすでに50台が開発され、製造の現場で活用されているとのことで、結果として、生産性向上のみならず、工場内の省スペース化なども実現できることも確認されたという。