情報通信研究機構(NICT)と大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)は12月6日、NIIが開発したファイル転送プロトコルである「MMCFTP」(Massively Multi-Connection File Transfer Protocol)を用いた日本-米国間のデータ転送実験を行ない、転送速度約150Gbpsで1～10TB(テラバイト)のデータの安定的な転送に成功したと発表した。

同実験は、11月13日～18日に米ソルトレイク・シティで開催した国際会議である「SC16」において、米国から日本に向けてデータを転送する形で実施。

実験系の構成

1TBを転送した時の実質転送速度(グッドプット)は137.2Gbps(転送時間58秒)～143.1Gbps(転送時間55秒)、10TB時は148.7Gbps(転送時間8分58秒)。1TBは一般的な25GBのブルーレイディスク(BD)で40枚分、地上波デジタル放送の動画に換算すると約120時間分に当たり、この大容量データを1分未満で転送したことになるという。

日米間の往復遅延時間は、シアトル経由で115ms(ミリ秒)、ロサンゼルス経由で113msであり、転送速度84Gbpsを記録した2015年の国内実験における25.7msと比べて4倍以上となった。

従来の転送プロトコルでは、遅延時間が4倍になると転送速度は4分の1になるが、MMCFTPは往復遅延時間の大きさに応じてTCPコネクションの数を自動調整するため、このような問題は発生しないという。なお、実験は「メモリーtoメモリー」という条件で実施した。

実験結果(帯域利用状況、観測点1、観測点2)

実験結果(帯域利用状況、観測点3-Transpac: 東京-シアトル間)

実験結果(帯域利用状況、観測点4-SINET5: 東京-ロサンゼルス間)

10TB転送時の実質転送速度は148.7Gbps(転送時間8分58秒)であり、トラフィックはシアトル経由とロサンゼルス経由の2経路に、ほぼ均等に分散した。これは、両経路間で往復遅延時間・回線品質ともに大きな差がなかったためとしている。

長距離転送では、2014年の「SC14」において80Gbpsの長距離転送が世界最速。距離条件・転送速度ともに大きく上回る今回の実験結果は、1サーバ対1サーバのデータ転送速度として世界最速だと考えられるという。