トヨタ自動車(トヨタ)は12月6日、Toyota New Global Architecture (TNGA)によリエンジン・トランスミッション・ハイブリッドシステムを刷新した新型パワートレーンを発表した。
トヨタはTNGAによりクルマを骨格から変え、低フード化・低重心化・運動性能の向上を図り、クルマの基本性能をレベルアップさせるためにプラットフォームを中心に全体的に見直し、2015年発売の4代目プリウス以降、新プラットフォームの採用拡大に取り組んでいる。同時に、パワートレーンについても低重心化とともに、優れた走行性能と高い環境性能を両立させた新型の開発を進めていた。
世界トップクラスの熱効率を実現した新型エンジン
新型エンジン「Dynamic Force Engine」は、高速燃焼技術、可変制御システムの採用に加え、排気・冷却・機械作動時などのエネルギーロスを少なくして熱効率を向上させるとともに高出力を両立。新開発の直列5気筒2.5L直噴エンジンでは、ガソリン車用で熱効率40%、ハイブリッド車(HV)用で同 41%と世界トップクラスの熱効率を達成した。また、緻密な制御による高レスポンス化と全速度域での高トルク化など多くの新技術を採用している。
新たな加工によりギヤの摩擦係数を低減
新型「8 速・10 速オートマチックトランスミッション(Direct Shift-8AT・10AT)」では、エネルギーロスを最小限にし、伝達効率を高めるためにギヤやクラッチなどにさまざまな対策を施した。ギヤは、歯面の摩擦係数を低くする新たな加工を施すことで、ギヤが噛み合う際のエネルギー伝達ロスを削減。クラッチは機構内の摩擦材形状を最適化し、回転時のクラッチの損失を従来型6速AT比で約50%低減した。さらに、小型軽量化により車両燃費を向上させるとともに、低重心化によって走行安定性を向上させている。加えて、ギヤをワイド化するとともに高性能・小型トルクコンバーターを開発し、ロックアップ領域を拡大することで、アクセル操作に対して滑らかかつ素早く反応するダイレクト感あふれる走りを追求した。
高速走行時のシステム効率を向上させる
4代目プリウスに搭載された小型・軽量・低損失化技術を継承し、2.5L用ハイブリッドシステムを一新するとともに、FR用の高性能マルチステージTHS(トヨタハイブリッドシステム)IIも新開発した。
マルチステージTHS IIは、ハイブリッド車の走りを一新する高い発進加速性能とダイレクト感あふれる走りを実現。高速走行時のシステム効率の向上に加え、高車速域でもエンジン間欠運転を可能とし高速燃費を向上した。
プラグハイブリッドシステムも一新し、従来のモーター走行に加え、これまで発電機として使用していたモーターを走行用としても使用するデュアルモードドライブシステムにより、力強いEVモード走行を実現。また、大容量リチウムイオン電池の採用により、プリウスPHVのEV走行距離を60km以上と大幅に延ばしている。
2021年までに年間販売台数の60%を新型パワートレーン搭載車に
2021年までの5年間で、エンジンは今回開発した2.5Lガソリンエンジンを含め9機種17バリエーション、トランスミッションは多段化AT、新機構の無段変速機など4機種10バリエーション、ハイブリッドシステムは6機種10バリエーションの投入を予定。2017年発売の新型車を皮切りに新型パワートレーンの搭載車種を順次拡大し、2021年にはトヨタ単独の年間販売台数(日本・米国・欧州・中国)の60%以上を目指す。これにより、2021年のトヨタ単独販売車からのCO2排出量の削減効果は、新型パワートレーンの燃費向上寄与分だけでも2015年の排出量に対して15%以上になる見込みだという。