アイリッジと飛騨信用組合は11月30日、FinTechソリューションによる地方創生の取り組みとして、スマートフォン用アプリを利用する電子地域通貨のプラットフォームを導入すると発表した。両社によると、金融機関による地域通貨の電子化は金融業界で初めてとのこと。

電子地域通貨のスキーム図

新プラットフォームではブロックチェーン技術を利用し、セキュリティを確保しつつ、システム投資コストの低減を可能とする利便性の高い金融サービスを実現するとしている。 地域密着型の金融機関として、利用者のメリットを確保しながら地域経済活性化を目指すことを本来の趣旨とし、併せて金融機関自身の収益にも有用なビジネスモデルを実現し、全国の金融機関や自治体などに向けて提供を開始するという。

その第1弾として、2017年春に同信組の職員を対象として「さるぼぼ倶楽部コイン(仮称)」を導入し、商用化に向けた実証実験を行う。

同実験を通じて、技術・セキュリティ・法制度や運用面における課題を抽出・検証し、2017年夏の実現を目指す。

同通貨は地域限定で利用できる地域通貨であり、地域住民や訪日外国人向けに提供する電子通貨とのこと。スマートフォン上で利用できるため、地域通貨の印刷・流通コストの減少が可能という。

ユーザーは現金でコインをチャージし、加盟店でのキャッシュレスでの支払が可能。コインにはプレミアムを付与することで普及を促すほか、有効期限を設定することで、コインを眠らせることなく、一定頻度での利用を促すとしている。

店舗側は導入に際し、決済端末などの大規模なシステム投資が不要であり、またクレジットカードなど他の決済システムと比べて初期費用や決済手数料を低く抑えられるため、手軽に導入できるという。

なお、導入については、同信組が提供する「さるぼぼ倶楽部」の加盟店(さるぼぼ倶楽部ファミリー店)からの開始を考えているとのことだ。

同プロジェクトのビジネス・スキームの策定は、同信組とトーマツベンチャーサポートの協業により実施したという。

同信組は今後も同社と連携し、法制度や運用面における課題解決を順次実施していくとしている。

アイリッジと同信組は今後、地域に密着した金融機関との協業による地域創生のためのFinTechソリューションを深化させ、決済や売上データの可視化により、ビッグデータ・マーケティングを推進するという。

加えて、これらのデータの利用をさらに進め、地域経済活性化を目的とするトランザクション・レンディング(売買や資金決済、顧客評価などの取引履歴を利用して審査をする融資)など、次世代FinTechサービスを展開していく。