熊本大学と大阪大学は11月24日、細胞が分裂する際の"スイッチ"を人工的に作り出すことに成功したと発表した。
同成果は、熊本大学大学院先導機構 持田悟准教授、英オックスフォード大学 B.Novak教授、大阪大学産業科学研究所 永井健治教授らの研究グループによるもので、11月23日付けの米国科学誌「Current Biology」オンライン版に掲載された。
細胞が分裂する際には、そのDNAを2倍にコピーした後に、子細胞に等分することが重要となる。コピーが終わらないうちにDNAが分けられてしまうと、コピーされていないDNA部分はどちらか一方の子細胞にしか伝わらず、それを受け取れなかった子細胞は正常に生きることができないため、細胞はDNAをコピーする時期(S期)とDNAを分ける時期(分裂期)を切り替えるスイッチを持っていることが知られている。
分裂期は約千種類のタンパク質がリン酸化されることで開始するが、リン酸化はS期ではほとんど起こっておらず、S期と分裂期を切り替えるにはリン酸化をスイッチのようにオン/オフする必要がある。リン酸化を引き起こす酵素CDKと取り除く酵素PP2Aが、この機構に関わることはわかっていたが、その詳細な仕組みについてはこれまで明らかになっていなかった。
同研究グループは今回、「試験管内再構成」という手法を用いて、CDKとPP2Aがシーソーのように連動してはたらきを交替することが、この"スイッチ"の仕組みの本質であることを解明。CDKとPP2A、そして両者を連動させているタンパク質グループの合計8種類を選出し、それらを混ぜることにより細胞分裂で見られる"スイッチ"を試験管内で作り出すことに成功した。同スイッチが閾値を持つことも明らかにしている。
同研究グループは、今回の成果について、細胞分裂ではたらいている複数のスイッチのなかではじめてその仕組みが十分に理解された事例であり、今後は同様の手法を用いてさらに高度な細胞機能の理解へと進んでいくものと説明している。