経営計画を実現するためにグループ間でのシステム統合に着手
北陸銀行は1877年の創業以来、北陸地方を中心に展開してきた地方銀行だ。本店所在地は富山県だが、国内187、海外6の拠点を持ち、関東・関西にも広く展開している。現在は北海道銀行とともに、ほくほくフィナンシャルグループの一員として活動。2016年4月からは、地域経済の発展に資する金融サービスの安定的な提供を目指す中期経営計画として「BEST for the Region」を掲げた。その内容は営業力強化・経理の効率化・経営基盤の強靭化といったものだ。
「経営の効率化によってコストを削減し、そこで生み出した予算を利用して営業力を強化することを狙っています。その効率化は、北海道銀行とのバック事務の統合やシステム統合によるグループシナジーを追求していくことで行おうと考えました。次世代クライアント仮想化基盤では、効率化と営業力強化のいずれもが実現できる必要があったのです」と語るのは、北陸銀行 IT企画グループ長の富永英司氏だ。
銀行には、金融的な処理を行う「勘定系」と、メールやグループウェアの利用といった一般的なオフィスワークに利用される「情報系」というシステムがある。これらのうち「勘定系」に当たるシステムは、2011年に横浜銀行、北海道銀行との共同利用システム「MAJER」へ移行することでグループ内のシステム統合を完了させていた。
XenDesktop選択の理由はモバイル推進や安全なインターネット活用
日中業務に利用するシステムと夜間バッチを行うシステムのリソース共有化や両銀行でのシステムの共同化によるコスト削減とともに重視されたのが、ワークスタイル変革の実現だった。タブレットによる営業推進と事務効率化を目指すにあたって、新システムではモバイルでのユーザビリティが重視された。
「以前からVMware製品によるデスクトップ仮想化は導入していましたし、Windows端末からモバイル利用が可能な状況にありました。しかし、実際に利用しようとすると、操作の遅延があって利用しづらいなど、多くの課題がわかったのです」と富永氏。
しかも、セキュリティ強化の目的で業務システムとインターネット環境を物理的に分離していたため、業務用に用意されたコンテンツしか利用できず、自行のWebサイトにある金融商品の紹介ページすら参照させることができなかった。
「営業品質の均一化は銀行にとって大きな課題です。実用的なモバイルツールがあれば、動画を利用した営業活動もできます。商品説明はコンプライアンスを踏まえて行うため表現が難しいところもあるのですが、動画にできれば営業品質が向上すると期待できます」と語るのは、ほくほくフィナンシャルグループでシステム開発を担当する北銀ソフトウエアの開発第一部 担当部長である堀洋人氏だ。
セキュリティを確保した上でインターネットを上手に利用し、モバイル環境で動画を活用した業務も行いたい。そうしたはっきりとした目標をもって選択されたのが「Citirx XenDesktop」だった。
モバイル環境のスムーズさや対応力を高く評価
システム面をSIerに任せきりにするのではなく、一緒に納得できるものを選定したいという思いから、選定は銀行と北銀ソフトウエアが共同で行った。
「2014年にシトリックスのツアーに参加してシリコンバレーに行った時、導入を検討していました。そのあと、社内の一部でテスト利用を実施。2015年10月から具体的な情報収集を行い、2016年の年始から3カ月で要件定義を行いました」と堀氏。
具体的な選定にあたっては、先に述べたモバイル環境でのユーザビリティについて細かなチェックを行ったという。
「他社製品とも比較しましたが、モバイルの使い勝手はXenDesktopが明らかに勝っていました。例えば、電波環境が悪い時、ユーザーはいろいろな操作を試しますよね。その操作が後から一斉に反映されて画面が追いついて動くのでは困るわけです。その点、XenDesktopは環境が悪い時でも動作し、途中で行った不要な動作は省略されるなど、現場での実利用がしやすい仕様でした」と富永氏は語る。
導入決定前には実際に利用するであろうWindowsタブレットを4機種用意し、全モデルでの利用検証を行った。これは端末ごとの性能差や癖による使い勝手が違う可能性を考えて行ったものだが、そうした細かい要望にも応えてくれたということでシトリックスへの信頼感が高まったともいう。
「操作性やパフォーマンスを最重視したので、テスト利用で問題点を感じることはなく、動画もコマ落ちせずにLTE回線でも十分に動いてくれるXenDesktopを高く評価しました。セキュリティ面では他社製品とそれほど大きな差があるとは感じませんでしたが、細かな設定ができて柔軟性が高いと感じました。コストメリットも十分でしたし、北海道銀行では以前からXenAppを利用していたので、運用の実績も信頼性も十分ありました」と堀氏は選定の経緯を語った。