アクセンチュアは11月17日、2035年にAI(人工知能)により先進12カ国の経済成長率が倍増し、労働生産性は最大40%の向上が見込めると発表した。
同調査は、アクセンチュア・ハイパフォーマンス研究所とフロンティア・エコノミクスが共同で、世界経済の総生産の50%以上を占める先進12カ国について、AIの影響力をモデル化した。
まず、2035年の各国の経済規模について、従来予想の経済成長を示すベースライン・シナリオと、AIの影響力が市場に浸透した場合に期待される経済成長を示すAIシナリオを比較した。
AIが最も高い経済効果を生む国は米国で、AIシナリオの場合は2035年に年間8兆3000億ドルの粗付加価値(GVA)が生み出され、GVA成長率(GDP成長率にほぼ相当)がベースラインシナリオの場合の2.6%から4.6%に上昇するという。
また、イギリスではAIシナリオの場合は2035年に年間8140億ドルのGVAが生み出され、GVA成長率がベースライン・シナリオの2.5%から3.9%に上昇する可能性があるとしている。
さらに、日本では、AIシナリオにおける2035年のGVA成長率がベースライン・シナリオに比べて3倍以上になる可能性があり、フィンランド、スウェーデン、オランダ、ドイツ、オーストリアでは、それぞれ2倍になる可能性があるという。
先進国市場では、AI技術により労働生産性が高まる可能性があり、人間が効率的に時間を使うことができるとともに、最も得意な仕事に集中できるようになるためだという。調査対象とした先進12カ国の経済規模が倍増するまでの年数は生産性の向上により短縮され、この年数は経済発展の指標の1つであり、国が技術イノベーションを幅広い経済基盤に普及させられるかが影響するとしている。
なお、AIを経済成長に向けた新たな原動力とするため、同社では「次世代に備える」「AIに対応した法規制を導入する」「AIのための倫理規定を策定する」「AIの再分配効果に対応する」といった問題に対処すべきだと提言している。
次世代への備えでは、人間の知能と機械の知能を融合させ、双方向に学習できる共存関係を構築するとともに将来的に必要となる知識やスキルの再評価が必要だという。法規制については、時代に即して法規制を改め、テクノロジーの変化と規制対応のスピードの差を埋められる適応性に富んだ自己改善型の法規制の導入が求められるとしている。
倫理規定に関しては、知能を持つ機械の開発および使用について、基準や規定を明確にした上で倫理面の議論を進めるべきだとしている。AIの再分配効果については、政策立案者はAIによるメリットを得る方法を明確にさせると同時に、想定されるデメリットにあらかじめ対処し、雇用や収益の変化により生じる影響を緩和できるようにすることが必要だという。