シトリックス・システムズ・ジャパンは18日、「ワークスタイルとデジタルトランスフォーメーションに関する意識調査2016」の結果を発表した。
この調査では、従業員数1,000名以上の国内企業に勤務し、パソコンまたはスマートデバイスを利用した業務を日常的に行っている個人(228名)」を対象とし、現在および5年後における業務のデジタル化、デジタル化に伴う働き方およびIT環境に関して質問を投げかけている。同調査は、IT調査・コンサルティング会社の株式会社アイ・ティ・アールの協力のもと、インターネット調査として行われた。
理想は「柔軟な働き方」、だが現状は6%
働き方の現状と理想に関する質問で、「理想の働き方」の問いでは、半数を超える52%の人が自由に選択できる働き方を選択しており、人々が柔軟な働き方を求めていることがわかった。一方、現在の働き方で「勤務時間、勤務場所ともに自由に選択できる」と回答した人は6%にとどまっている。
つまり、回答者のほとんど(94%)が現状、勤務時間、場所のいずれかまたは両方が選択できないことが浮き彫りになった。その内訳として、「勤務時間のみある程度自由に選択できる」人が15%、「勤務場所のみある程度自由に選択できる」人が3%であるのに対して、5年後の働き方では「勤務時間、勤務場所ともに自由に選択できる」と予想した人は13%、「勤務時間のみある程度自由に選択できる」と予想した人が27%、「勤務場所のみある程度自由に選択できる」と予想した人が14%まで増加し、人々が今後より柔軟な働き方が可能になると予想していることが明らかになった。
5年後にはデジタル化されていてほしいものは?
「現在デジタル化が不十分である業務」と「5年後のデジタル化が特に必要とされている業務」は、上位3件(「社内の打ち合わせ、会議(不十分43%、必要32%)」、「社員の専門知識・スキルの把握(不十分32%、必要22%)」、「社員の居場所(在席状況)やステータス(状態)の確認(不十分28%、必要19%、)」)が共通して多くの回答を集めており、デジタル化が不十分な業務ほど5年後のデジタル化の必要性がより求められている結果となった。
上位3位以下でも、「社内の人脈・つながりの把握(不十分25%、必要16%)」、「所属部門をまたいだ情報伝達・連絡(不十分25%、必要17%)」など、社内コラボレーションやコミュニケーションに関連する業務のさらなるデジタル化が求められている。また、今後業務のデジタル化を進めるうえでの障害として回答数が全体の50%を超えたのは「情報セキュリティへの不安(54%)」、「予算の不足(53%)」となった。そのほかにも、人のスキル、知識に関連する回答を多くの人が選択した。
デバイスはよりモバイル化、アプリやデータはクラウドへ
業務を行うデバイスやデバイスを取り巻く環境に関して、5年後の利用デジタル端末は現在と比較すると、デスクトップ型PCや大型のノートPCの利用は減少し、PC・タブレット複合型端末、タブレット、ウェアラブル端末の利用が増加するという傾向が見られる。また、デバイスを利用する周辺環境としては、約半数の人が5年後にはアプリケーションの実行(48%)、データの保管(58%)はクラウドなどの端末以外の場所で行われると予想している。
5年後のワークスタイルに最も影響を及ぼす技術は?
5年後を想定した際にITやデジタル技術の進化が自分の仕事になんらかの影響を及ぼすと回答した人は、全体の80%。「自分の能力をより拡大する機会を生み出すと思う」と回答した人は44%、「機会と脅威のどちらにもなりうると思う」と回答した人は26%で、合算すると全体の70%が(デジタル化を)ある程度前向きに捉えていることがわかった。一方で、「自分の役割を奪う脅威になると思う」と回答した人は10%、前述した「機会と脅威のどちらにもなりうると思う」と回答した26%と合わせると4割弱となり、機会と考えている人の約半数の回答となっている。
また、5年後のワークスタイルに大いに影響を及ぼすと思うITとして、3割以上の人が「クラウドサービス(39%)」、「IoT(モノのインターネット)(30%)」と回答。中でも「クラウドサービス」はやや影響を及ぼすと思うと回答した人(42%)と合わせると、80%以上の人が5年後のワークスタイルに影響を及ぼすITとして回答した。「大いに影響を及ぼすと思う」、「やや影響を及ぼすと思う」を合わせた回答の上位3つは、「クラウドサービス(81%)」に次いで、「認知技術(自然言語、画像認識、音声認識など)(72%)」、「IoT(モノのインターネット)(69%)」となっている。
デジタル化、副業の許可は職場をより魅力的に
これからの働き方と職場の関係について、柔軟な働き方、業務のデジタル化、介護/育児、副業の項目について意見を聞いた結果、業務のデジタル化を積極的に進める企業の方が魅力的であると思うと回答した人が68%(大いに思う27%、やや思う41%の合計)、副業が認められる企業が増えれば、そうした企業に転職したいと思うと回答した人が52%(大いに思う14%、やや思う38%の合計)と全体の半数を超え、業務のデジタル化、副業を認める企業に魅力を感じている人は多かった。一方、介護/育児などの家庭の事情で退社せざるをえなくなるかもしれないと思う人は39%(大いに思う11%、やや思う28%の合計)と約4割に上り、柔軟な働き方や制度の導入など、介護/育児などによる退職不安を低減し、人材を確保する方法が求められていることが読み取れる。
今回の調査を行ったアイ・ティ・アールのシニア・アナリスト・舘野真人氏は、「今回の調査では、大企業に所属する従業員たちが、将来に向けて勤務時間も勤務場所もより自由になることを強く望んでいることが改めて確認されました。こうした要望にこたえられない企業は、人材の獲得、維持の面で窮地に立たされる可能性があります。企業は、人事制度や就業制度の見直しによって働き方の自由度を高める一方で、新しい働き方を想定したIT環境をデバイス、データ、アプリケーションそれぞれの関係性を考慮しつつ再定義する必要があるでしょう」とコメントしている。
調査概要
調査名:「ワークスタイルとデジタルトランスフォーメーションに関する意識調査2016」
調査主体:アイ・ティ・アール
実施期間:2016年9月3日~7日
調査方法:ITRの独自パネルを対象としたインターネット調査
調査対象:従業員数1,000名以上の国内企業に勤務し、パソコンまたはスマートデバイスを利用した業務を日常的に行っている個人(IT部門、非IT部門で割付を実施)
有効回答数:228件