大阪大学(阪大)は11月15日、言語に関連する脳活動が遺伝と環境の影響を同程度受けていることを明らかにしたと発表した。
同成果は、大阪大学国際医工情報センター平田雅之寄附研究部門教授、同医学部附属病院荒木俊彦臨床検査技師らの研究グループによるもので、11月15日付けの米国科学誌「NeuroImage」に掲載された。
言語機能はこれまで、周りの環境などの影響を受けて後天的に形成されていくものと考えられてきた一方で、ある特定の遺伝子異常により言語障害が生じることから、遺伝的な影響もあることが知られていた。しかし、言語機能の中枢である脳の活動については、遺伝と環境の影響をどの程度受けているか解明されていなかった。
今回、同研究グループは、遺伝的に100%一致する一卵性双生児と約50%一致する二卵性双生児を対象とし、言語に関する課題を与えたときの脳活動を脳磁計にて計測した。与えられた課題は、「あひる」や「メロン」など3文字のひらがなもしくはカタカナの名詞100単語をスクリーンに提示し、その名詞に関連する動詞を思い浮かべてもらうというもの。このときの言語機能に関連しているとされる低γ帯域(25-50Hz)の脳活動の強さを比較した。
この結果、低γ帯域(25-50Hz)の脳活動は左前頭葉に限局して出現。その強さについて、一卵性ペア、二卵性ペアでそれぞれ比較すると、一卵性ペアで高い類似性が認められた。さらに、遺伝と環境の影響度を共分散構造分析という手法を用いて算出することにより、遺伝と環境の影響度がいずれも50%程度であることが明らかになった。これにより、言語機能における左前頭葉の脳活動は遺伝と環境から同程度影響を受けて形成されていることが示されたといえる。
同研究グループは、今回の成果により言語脳機能の形成が環境によっても左右されることが明らかになったことから、今後、効率的な言語教育法の開発につながることが期待されるとしている。