国立情報学研究所(NII)、富士通研究所、サイバネットシステムの3者は11月14日、名古屋大学および東京大学と共同で、NIIの人工知能(AI)プロジェクトである「ロボットは東大に入れるか」(東ロボ)において東大第2次学力試験に向けた論述式模試とマークシート式の大学入試センター試験模試に挑戦し、論述式模試の数学(理系)で偏差値76.2、センター試験模試の物理では偏差値59.0と、2015年度を大きく上回る成績を挙げたと発表した。
NII、富士通研究所、名古屋大学を中心に構成する「東ロボ」数学チームは、代々木ゼミナールの論述式模試である「東大入試プレ」に挑戦した。
数学(理系)では、問題文を入力後、問題文の解釈から自動求解、解答の作成までをAIにより完全に自動で行ない6問中4問を完答した結果、偏差値76.2(120点満点中80点)を獲得したという。2015年度は駿台予備学校の論述式模試を受験し、数学(理系)は偏差値44.3(20点)だった。
数学チームには、2012年度に富士通研究所が、2013年度に名古屋大学が参加し、3団体を中心に共同研究を行っている。解答プロセスの前半にあたる自然言語処理部分は名古屋大学を中心とするグループ、後半の数式処理部分は富士通研究所を中心とするグループが担当した。
一方、富士通研究所、サイバネット、東京大学を中心に構成する「東ロボ」物理チームは、従来の技術に数学チームで確立した技術を加えて、2015年度に続いてベネッセコーポレーションのセンター試験模試である「進研模試 総合学力マーク模試」に挑戦した。
シミュレーションの設定において一部で人が介入したが、現時点の自然言語処理技術と画像処理技術を用いれば生成可能と想定される内部形式から、AIによる自動求解の結果、偏差値59.0(100点満点中62点)を達成。2015年度と比較して、偏差値で12.5ポイント、得点は20点向上した。
物理チームは2015年度までNIIを中心に研究開発を行なっていたが、2016年度から富士通研究所、サイバネット、東京大学の3団体を中心にした新体制で共同研究を実施している。
今後、東ロボの数学・物理チームでは、構文解析処理や文間関係解析処理といった個々の言語処理ステップのさらなる高精度化や、言語処理と数式処理の中間段階での処理手順の工夫、また言語処理と数式処理の融合により、考えながら読む技術の研究開発を進め、多様な問題に対し正確に解答する技術の開発を目指す。
また、東ロボは従来のような学際的研究を通して、高度な専門性、横断的な知識や研究推進力などを有するπ型人材・問題解決型高度人材育成にも貢献していく。
富士通研究所は東ロボを通して深い言語処理の技術や高度な数理技術の開発を推進し、富士通のAI技術である「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」に利用する。
サイバネットは、同プロジェクトを通じて得た技術を子会社であるMaplesoftの製品「Maple/MapleSim」の開発へ応用し、数理技術の産業応用に寄与していく。