東芝と東芝マテリアルは11月10日、レアアースの中でも特に希少な重希土類を一切使用せずに高い磁力と優れた減磁耐性をあわせ持つモータ用の高鉄濃度サマリウムコバルト磁石を開発したと発表した。
同開発品は、高耐熱モータの実使用温度域(140℃以上)において、現在一般的に採用されている耐熱型ネオジム磁石を上回る磁力を持つとともに、180℃でも優れた減磁耐性を示すとのこと。モータの高温時も磁力を保持できるため、モータの冷却システムが不要または簡素化でき、省スペース化ならびに低コスト化が可能となる。また、薄型磁石が使用可能となることでモータ設計の自由度も向上する。
140℃以上の耐熱性が要求されるハイブリッド自動車や電気自動車の駆動モータ、産業用モータ、風力発電機など向けに耐熱型ネオジム磁石の需要は増加している。ネオジム磁石は室温で大きな磁力を持つもののモータの実使用時に高温になると磁力が大幅に低下したり、コイルに大きな電流を流した際に磁石に加わる反磁界の影響で減磁してモータトルクや出力が低下してしまうという課題があった。
こうした減磁はネオジムの一部をジスプロシウムやテルビウムといった重希土類で置き換えることである程度抑制できるものの、高い磁力を維持しながら180℃まで減磁耐性を保つのは困難だった。また、重希土類の鉱山が一部地域に集中しているため、政治状況によって調達が難しくなったり、市況が乱高下しやすくなるといった問題がある。
今回の開発では、東芝が2012年に開発した高鉄濃度サマリウムコバルト磁石に独自の熱処理技術を適用することにより保磁力を30%向上するとともに、高耐熱モータの実使用温度域(140℃以上)で耐熱型ネオジム磁石を上回る高い磁力を保持したまま、180℃でも優れた減磁耐性を示すことを確認した。さらに、両社共同で同開発品の量産技術を開発し、その基本プロセスに目処が立った。
東芝マテリアルは、今回開発した耐熱モータ用高鉄濃度サマリウムコバルト磁石のサンプル提供を同日より開始し、ニーズを調査した上で早期の市場投入を目指すとしている。