SAPジャパンはこのほど、デジタルビジネスを体感できる場として、東京本社に「カスタマー・エクスペリエンス・センター」を開設した。今回、同センターにおいて、4つのデモンストレーションを体験してきたので、その詳細をお届けしたい。

初めに、Chief Operating Officerを務めるCathy Ward氏に、同センターを開設した経緯を聞いた。同社は、デジタルによってビジネスを変革する「デジタル・トランスフォーメーション」の推進を戦略の1つに据えているが、このデジタル・トランスフォーメーションを実際に体験できる場として、「カスタマー・エクスペリエンス・センター」をグローバルで展開しているという。現在、グローバルで12拠点に設置されており、来年度末には2倍に増やす予定だという。

SAPジャパン Chief Operating Officer Cathy Ward氏

Ward氏は「デジタルの意味は実に幅広い。企業にとっては、デジタルを活用することは、ビジネスモデルの変革、仕事のやり方の変更、さまざまなモノをつなげていくことを進めていくことを意味する」と語った。

デジタル・トランスフォーメーションは2016年のIT業界のトレンドの1つであり、UberやAirbnbが成功例として語られているが、一般企業における実態はわかりづらい。そこで、「一般企業の人たちにデモを見て触ることで、デジタル・トランスフォーメーションを体感してもらえる施設を開設した」とWard氏。

本稿執筆時点で、公開されているデモは「SAP Digital Boardroom」「IoT Smart Train」「WCc(Wearable Communicator)」「INITINITE CART - by SAP Hybris Labs」の4種類。今後、利用者のフィードバックを基に拡張していく計画だという。今回、すべてのデモを体験したので、以下に詳細を紹介しよう。

リアルタイムでデータに基づく意思決定を実現「SAP Digital Boardroom」

「SAP Digital Boardroom」はその名のとおり、経営層を支援するソリューションだ。「SAP HANA」と「SAP S/4 HANA」を基盤としており、経営層が会議の場で利用して、必要なデータにリアルタイムでアクセスすることを可能にすることで、その場で意思決定することを支援する。

例えば、経営会議では、予定と実績を比較することがあるだろう。SAP Digital Boardroomでは、ダッシュボードからクリックするだけで、最新のデータを探し当てることが可能だ。データ集計のバッチ処理を待つ必要なんかない。その最新のデータに基づき、意思を決定することができる。「データがそろわないから、日をあらためて会議を開催」なんてこともなくなるわけだ。

ダッシュボードの中のデータをタッチすれば、ドリルダウンして詳細な情報を入手することができる

日本の多くの企業では「会議にかかる時間の短縮」「会議の数の減少」が課題となっているが、SAP Digital Boardroomは貢献してくれそうだ。実際、このデモを見た顧客は大きな興味を示すとのこと。

企業経営に直結するデジタル・トランスフォーメーションということで、企業からすると、最も取り入れやすいソリューションかもしれない。

電車の稼働状況をリアルタイムで把握できる「IoT Smart Train」

「IoT Smart Train」は、プラレールの模型にセンサーを付けて、データを収集してダッシュボードに表示することで、遠隔からその稼働状況をリアルタイムで把握できるソリューション。

デモ環境では、1秒ごとにセンサーから距離、光、温度のデータをクラウド環境に収集しており、強風など、異常な状況が発生した場合は警告が出される。

プラレールに装着したセンサーからデータを収集し、リアルタイムで監視することが可能

製造業では、これまでもこうしたIoTを活用したデータ収集は行われていたが、オンプレミスのデータベースが使われていた。SAPとしては、このデモによりS/4 HANAをクラウド上で使う「SAP HANA Cloud Platform」のメリットを強調したいという。同デモでは、SAP HANA Cloud PlatformのIoTサービスを活用している。

クラウド上にデータを収集し、異常を検知した場合、運行管理システムやメンテナンス管理システムに通知して、修理に必要な部品や作業員を確保することも可能になり、電車が停止している時間を減らすことが可能になる。