ヴイエムウェアは11月7日、日本市場においてハイブリッド・クラウド戦略のさらなる推進に向けて、新たなアーキテクチャ「Cross-Cloud Architecture」」を展開し、これに伴い、vCloud Air Networkサービスのパートナー6社との協力関係を強化すると発表した。
説明会では、初めにVMware 最高経営責任者(CEO)を務めるパット・ゲルシンガー氏が、Cross-Cloud Architectureを中心としたビジョンや事業戦略について説明した。
ゲルシンガー氏は、同社がThe Economistに依頼した「クラウド上でセキュリティ侵害が発生した時に責任を負うのはだれか」を問う調査において、67.5%が「IT部門」と回答したことを引き合いに出し、「IT部門はクラウドに対し、コンプライアンスを担保することが求められている」と述べた。
そして、VMwareはサーバの自由度を提供するためにビジネスを推進してきたが、これからはIT部門のコントロール性を確保しつつ、クラウドの自由度を増していくことをミッションとしていくという。
そこで、カギとなるのがCross-Cloud Architectureだ。VMware Cross-Cloud Architectureは今年8月に米国で開催されたVMworld 2016で発表された、クラウドやデバイスを問わず、共通の運用環境でアプリケーションを実行・管理・接続すると同時に、安全性も確保するアーキテクチャとなる。
そして、Cross-Cloud Architectureの実現に向けた、統合SDDCプラットフォームが「VMware Cloud Foundation」である。VMware Cloud Foundationは、ハイパーコンバージド・ソフトウェア(VMware vSphereとVMware Virtual SAN)と、業界先進のネットワーク仮想化プラットフォーム(VMware NSX)、コアコンポーネントとなるVMware SDDC Managerによって構成されている。
ゲルシンガー氏は「この5年間、SDDCを推進してきたが、環境をまとめていくことは大変だった。そこで、もっと簡単に環境を構築できるプラットフォームとして、VMware Cloud Foundationを開発した。Cloud Foundationを用いることで、プライベートクラウドを容易に構築できる」と語った。
さらに、VMwareのビジョンについては「あらゆるデバイス、あらゆるアプリケーション、あらゆるクラウドに対応することが、われわれのミッション」とした。
続いて、ヴイエムウェア 代表取締役社長のジョン・ロバートソン氏が、日本市場におけるCross-Cloud Architecture戦略について説明を行った。
ロバートソン氏は、「日本はアウトソーシングの歴史が長く、インテグレーションに対する要求が高い。こうしたことから、サービスプロバイダーがなくてはならない存在となっており、プライベートクラウドとパブリッククラウドの双方のメリットを提供できている。これは、日本だけで行われていること。こうした日本のベストプラクティスはぜひともグローバルに持っていきたい」と、日本市場におけるビジネスの特徴を語った。
ロバートソン氏によると、「日本のベストプラクティス」として一番に挙げられるのは「SLAの高さ」だという。その例として、サービスに障害が発生した時、欧米のプロバイダーは解決した経緯をわざわざ説明しないが、日本のプロバイダーは「どうやって解決したか」を説明するなど、サポートサービスがきめ細かであることが挙げられた。
こうした経緯から、同社はクラウドサービスプロバイダーのパートナーネットワーク「VMware vCloud Air Network」に力を入れており、国内では約160者が参加している。これらのパートナーのうち、今回、インターネットイニシアティブ、NTTコミュニケーションズ、ソフトバンク、ニフティ、日本IBM、富士通の6社と協力関係を強化する。説明会には、各社から関係者が登壇し、メッセージを寄せた。
質疑応答では、今年10月、VMwareとAmazon Web ServicesはVMware環境をAWS上で提供する「VMware Cloud on AWS」を共同で発表したことから、同サービスが国内で提供されると、日本のパートナーに影響を与えるのではないかという質問が出た。
この質問に対し、ゲルシンガー氏は「VMware Cloud on AWSはまず米国で来年の半ばの提供が予定されており、それ以外の国で提供するにはまだ時間がかかる。よって、各サービスパートナーは自社のサービスを改革する時間がある」と答えた。
ロバートソン氏は、「今日もパートナーの皆さんと話をしたが、『AWSに対応するのは当たり前』という意見をいただいた。すべてのベンダーと組まなければ、顧客のニーズにこたえることができない。その一方で、IaaSはそれほどもうかる大きな市場ではなくなっているという側面もある」と述べた。